きょう字幕を入れて番組が完成した。
7月5日に沖縄から帰って来て始動したので、
実質二ヶ月半で完成に漕ぎ着けたことになる。
舞台は北海道旭川市。
主人公は、
佃煮・煮豆などの食品加工会社「藤六食品」を
7月に倒産させてしまった捧範行社長(57)である。
契約栽培で作った減農薬の豆を使うなど
地元北海道の原料にこだわり続けてきたが、
安価な中国産・カナダ産の原料を使う業者との
価格競争に敗れ去ってしまった。
(写真は剣淵町の豆農家を視察に訪れた捧社長=右)
中小企業の経営者は銀行融資に個人保証を付けるため、
倒産すると莫大な負債を抱え個人破産するしかなくなる。
もう一人の主人公が、
この会社の再建を手助けすることになった
株式会社北海道村(道内では「バンビ・キャラメル」で知られる)の庄子敏昭社長(59)。
庄子社長も旭川出身で、捧社長とはかつて娘同士が同じ保育園に通っていたため親交がある。
それもあって、倒産した会社の再建という難題に挑むことになった。
捧社長のたっての要望で、従業員を一人もクビにすることなく、全員を再雇用しての再出発に取り組む。
そこに、毎年黒字の堅実な経営を行ないながら、
後継者がいないため庄子社長に会社を売って後を託した
旭川きっての菓子の老舗・梅屋の山本憲彦元社長(65…現在は会長)がからむ。
つまり、これはリーマン・ショックに端を発する深刻な不況(というか転形期)のなかで、
老いを迎えようとする中小企業のオーナー社長たちの「決断」=「人生の選択」の物語なのである。
試写が終わって、
プロデューサーのM君(ぼくより10歳も若いが、れっきとした上司である)が
「もっと思い切ってナレーションを減らしてもよかったかもしれませんね」と言った。
ぼくはそもそも「説明」が嫌いなのでナレーションは少ない方なのだが、無念、まだ減らせたか…。
ぼくに言わせれば、番組がナレーションでモノゴトの意味を解説しようとする昨今の風潮は愚の骨頂で、
「意味」は番組を見て下さった方が自分なりに汲み取ってくれればいい話である。
テレビというメディアは「映像」をもって物語られるべきで、
そして、「映像」とは本来曖昧なものであり、様々な意味に解釈できる多義的なメディアである。
その曖昧さ(多義性)は、実は「映像」の限界ではなく、可能性なのである。
そこを間違えて安易な(言葉による)意味づけに走っては、テレビというメディアは自滅する。
ナレーション、つまり「言語」は、
映像を理解するための「補助線」であればよく、それ以上のものではない。
だから、ぼくはできるだけナレーションを減らしたい。
第一、ナレーションが少なければ、台本を書くのが楽でいい…。
ともあれ、今回の番組は、
登場人物の表情と会話(ぼくは会話も映像のうちだと考えている)を愉しんでいただきたい。
「愉しんで」という表現は誤解を生むかもしれないが、他に適切な表現がないからそういうのだが。
作り手としては、
2009年という時代を生きている
名もなき人たちの喜怒哀楽の一端を切り取ることができていれば本望である。
ETV特集「社長たちの決断 〜生き残りを模索する中小企業〜 」
9月20日(日)夜10時 教育テレビにて放送(60分)
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