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札幌に出張したので、すすきのの「○寿司」に顔を出した。
「○寿司」については以前も書いたが、
北海道では貴重な「仕事をした寿司」を食べさせる店である。


昨夜訪れた居酒屋「味百仙」
「美味しんぼ」の雁屋哲さんに紹介していただいた名店で、
逆に雁屋さんを案内して喜んでいただき、
ぼくとしては大いに面目を施したのが「○寿司」である。
で、「味百仙」の主・長島さんと「○寿司」の川崎さんとは、
渓流釣りや旨いものの食べ歩きをともにする親しい友人同士だ。
ついでにいえば、
大阪の「ながほり」の御主人も仲間だというから世の中は案外に狭い。
昨夜「味百仙」で
「○寿司」の川崎さんのお嬢さんが結婚するという話を聞いたので、
ひとつからかってやろうと考えたわけである。

川崎さんのお嬢さんとは彼女が大学生のときに会っている。
週末に店を手伝っていたのだが、
この親父になぜ?…と訝しく思うほど、素直で可愛らしいお嬢さんだった。

川崎さんとぼくは当年とって55歳の同い年で、
もう十年以上、
お互い「絶対にあんたの方がオヤジ臭い」と主張して譲らない関係である。
そんなわけで今回は鬼の首を取ったような気分で
「花嫁の父になるんじゃおしまいだね、オヤジそのものだ」と水を向けると、
意外にもあっさり「本当だね」と首肯した。
「もう何年もすりゃ爺(じじ)だもんね」という。
こうして永年の「論争」は、当方の全面的勝利のうちに幕を下ろしたわけだ。
「花嫁の父」になるお気持は?…と訊くと、
「日によって違うね。嬉しいときもあるし、淋しい日もある」と複雑である。
新郎側のご両親は手放しの喜びようだそうで、
「それをみると包丁を投げつけてやりたくなる」と物騒なことを云った。

「○寿司」のつけ場には、
東京銀座の名店「小笹寿司」で修業をしてきた息子さんも立っていて
これがまた、いまどき珍しい折り目正しい、なかなか凛々しい若者である。
親方でもある父親に対して
すべて「ですます」の丁寧語で受け応えしていたのが印象的だった。
「もうすっかり楽隠居だね」とからかったら、
「二人とも素直に育ってくれたからね」とまたしても逆らわない。
花嫁の父は、「自他共に認めるオヤジ」の至福に浸っているようにみえた。
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