5月1日から沖縄に来ている。
2日放送の番組を作って、その足で那覇に飛んできた。
沖縄には毎年のように来ているが、今回は初めて妻を同伴してきた。
彼女にとっては初めての沖縄である。
当初は、妻を帰した後で座間味に渡ってダイビングを愉しむつもりだったが、
3.11で仕事の予定が立たなくなってしまったのでキャンセルした。
(結果的には、潜る余裕はあったのだが…)
せっかく沖縄に来たのだからと、
マリンスポーツを体験してみることをかみさんに提案した。
彼女が海の面白さを知ってくれれば、
今後ダイビングに行きやすくなるというヨミがあったことはいうまでもない。
シュノーケリングと体験ダイビングの選択肢を提示したところ、
色とりどりの魚が泳ぎまわる様を間近で見たいと体験ダイビングを希望した。
彼女がダイビングを体験している間ぼくはシュノーケリングで遊ぶことにして、
那覇のショップに予約を入れた。
行き先は那覇港からボートで20分のサンゴ礁、チービシである。
そして、今朝を迎えた。
すでに梅雨入りしている沖縄は雲が垂れ込めているが、雨は降っていない。
ウェットスーツと、マスク、シュノーケル、フィンの「3点セット」を借りる。
フィンはとても小さいもので、
これでは素潜りを楽しもうにも必要な推力を確保できそうにない。
ぼくはちょっとがっかりする。
チービシにつくまでの間、
ショップのガイドからダイビングの基礎について説明を受ける。
ぼくはパニックさえ起こさなければ絶対に安全だからと請け合うのだが、
泳げない妻は次第に不安になってきた様子。
チービシに到着して、まず水に慣れるためシュノーケリングをする。
ぼくはいち早く飛び込んで、海面で妻を待つ。
船尾に設えられた梯子を伝って海に入るかたちなのだが、
梯子まできた途端、妻は「ダメ、無理、私できない」とぐずり始めた。
大丈夫、スーツを着ていれば(浮力があるので)絶対沈まないと宥めるが、
完全に腰が引けていて、ほとんど泣き出さんばかり。
見かねた船長がライフジャケットを持ってきてくれたので、着せてやる。
手をつないでゆっくり海に導くが、
一瞬顔が水面について水の中が見えた途端、妻はパニックに陥った。
「助けて!沈む!!死んじゃう!!!」
スーツのうえにライフジャケットまで着込んでいるので、沈もうたって沈まない。
溺れるはずはないのだが、本人の主観としては既に「溺れている」のである。
こうなると、ぼくがいくら説明しても聞く耳を持たない。
潮に流されるようにしてボートから数メートル離れていたのだが、
「お願い、助けて〜ッ、船に戻るぅ!」と泣き叫ぶ。
じたばたともがいて、ぼくにしがみついてくる。
しがみつかれるとぼくの方が動けなくなってしまうので、
いったん体を離して「船に連れてってやるから」と手を差し伸べる。
ところが、あろうことか、かみさんはぼくの手を振り払って、
「助けて!」とショップのガイドを手招きをしながら、SOSを発信し続ける。
絶対安全な状況で一人騒いでいるだけだから、呆れて誰も助けにこない。
他の客にも対応しているわけだから当然である。
かみさんはますます絶望的になって「助けて、助けてぇ〜!」と連呼する。
ぼくがいくら手を差し伸べても、全く無視。
実は妻から全く信頼されていなかったことをこの期に及んで自覚する。
ハタから見たら、
夫に溺死させられそうになって必死に助けを求める妻に見えただろうな。
ようやくガイドが来て、パニック状態の妻を船に戻した。
そして他の客を連れて海に潜っていった。
ぼくはしばらく海の中を見たり、
小さなフィンで潜ろうと虚しい努力を繰り返したりして遊んでいたが、
妻が落ち着きを取り戻したころを見計らって、
船の上からでいいから水の中を覗いてごらんと誘う。
かみさんは恐々梯子を下りてきて、
手すりをしっかりと握ったまま、水中メガネで下を覗いた。
と思うと、僅か一秒かそこらで顔を上げてしまう。
足がついてるんだから怖くないよ、大丈夫だよともう一度促すと、
一応は海の中を見ようとするのだが、やはりすぐに顔を上げてしまった。
最初にパニックの引き金になったときを入れても、
結局、彼女が海の中を見たのは合計3秒弱というところだろう。
陸に戻って昼食をとっているときに、
かみさんが「海の中は綺麗だったね」と云った。
…うそつけ(爆)。
夜は地元の居酒屋「ちゅらさん亭」で、
エビに目がない妻にセミエビを食べさせる。
セミエビは高価だが、イセエビより美味と言われるエビである。
公設市場で見かけることはあるが、
(海の中でも見たことがある…洞窟の天井に張り付いていた)
このエビを食べさせる店は那覇でも二軒しかないという話だ。
もちろんぼくも初めて食べたのだが、
活き造りは身に弾力と歯応えがあって、上品な甘みは流石の美味。
頭や脚、殻で作った味噌汁も旨味が充分で、刺身以上に美味しいと思った。
すっかり気を良くした妻は、
「来年、もう一度(体験ダイビングに)挑戦するね」とのたまった。
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