ぼくは元来が「原理主義的寝正月派」なのだが、
「正月くらいは家事から解放されたい」という妻の意向で、
今年は元旦早々に家を出て台湾に向かうことになった。
日ごろ出張ばかりしている反動だろうか、
海外旅行にはとんと出不精で、
台湾を訪れるのも初めての経験である(妻は三度目)。
朝9時40分に成田を飛び立って、
昼過ぎにはもう台北の桃園空港に到着するから早いものだ。
台湾(当地では「臺湾」と表記)は気温15℃前後、
雲が重く垂れ込め、湿度が高いので蒸し暑く感じる。
ぼくは着いてすぐに冬物のジャケットを脱いだ。
タクシーで台北市街に向かう。
天気が悪いこともあるが、街の印象は暗く、陰鬱である。
ただし、夕方になって散策を始めると、
この街が好きになるのに時間はかからなかった。
ぼくはいわゆる「観光地」にあまり興味がない。
知らない街に行って、
生活感あふれる裏通りや市場をほっつき歩くのが好きだ。
台北の街は古く、ちょっと草臥れている。
その古っぽさがぼくには好ましい。
例えば、妻の故郷である上海のような、
高度成長に浮かされて殺気立ったようなところがない。
きっと人の心も穏やかなのだろう。
たぶん治安もいいのではないか。
(夜の裏通りを歩いても全く危険を感じなかった。)
驚いたのは街を走るスクーターの多さである。
オートバイはほとんど見かけない。
自転車も少なく、スクーターだけがやたらに目立つ。
通りには中古のスクーターを売る店が軒を連ねている。
どういう経緯でこういうことになったのか、興味深い。
夕食は妻の奨めで屋台を食べ歩くことにした。
滞在初日の今夜は、
ホテルから歩いて1時間ほどのところにある
一本の路地に大変な数の屋台がひしめき、人もひしめく。
「観光夜市」というが、地元らしい人の姿も目立つ。
様々な食材や料理が売り買いされていて、
市場全体がエネルギッシュな活気が溢れている。
料理は一皿30元~50元(80円~130円)くらいで、
何を食べても安くて旨い。
肉を漢方の薬味で煮込んだ「排骨湯」を注文した。
羊肉と豚肉の二杯。
香りにクセのある羊肉の方をぼくは気に入った。
もう一軒、店を替えて、また羊肉の排骨湯を食べた。
最初の店の肉は固めで噛めば噛むほど味が出たが、
今度の店は柔らかくトロトロに煮込んである。
どちらも旨い。
ぼくが困ったのは酒を売っている店がないことで、
一度市場を出て、
セブンイレブンでビールを買って戻ってきた。
缶ビールを片手に、立ち食い、立ち飲みである。
多少落ち着かないが、これはこれでいいものである。
台湾の人たちは日本人に対してフレンドリーだが、
この夜市には日本の大衆料理を出す店も多く、
地元のお客さんで混みあっている。
なかに「日本一 圓圓焼」という店があって首を傾げた。
「日本一」といっても、ぼくは日本で見たことがない。
覗き込むと、大判焼きサイズのお好み焼きのようだった。
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