写真は南相馬市深野(ふこうの)地区にある
「Mさん」こと門馬伸博さんのお宅である。
去年の秋に撮影した写真で、
立派なイグネ(居久根=屋敷森)に囲まれている。
9月2日付のブログで書いたように、
このイグネは切り倒されて、いまはない。
番組の仕上げと打ち上げの酒に忙殺されて、
ブログの更新をサボっているうちに、
とうとう放送日がやってきた。
「除染 そして、イグネは切り倒された」
今夜21時放送(総合テレビ)
再放送が11日(木)午前0時25分、つまり10日深夜にある。
2日付のブログの見出しが
ほとんどそのまま番組の正式タイトルになった。
こんなことは珍しい。
取材で南相馬に通い始めて一年余りになる。
折りに触れて「ETV特集」などで放送してきたが、
この番組はその集大成ともいうべきものだ。
ぼくは福島原発事故の「等身大の記録」にこだわってきた。
それはもちろん今回も同じことである。
政府は「年間20ミリシーベルト以下の放射線」では
健康被害をもたらす危険性は極めて低いという。
門馬さんのお宅がある深野地区を始め、
南相馬のほとんどのところは20ミリシーベルト以下だ。
だが、安全だといわれて安心している人は、
ぼくの知る限り誰もいない。
福島第一原発の事故以来、
政府や原子力の推進に関わってきた専門家のいうことを
誰も信じなくなった。
この番組は、
不安にさいなまれながらも、
福島で生活を続けようとしている人たちの記録である。
そうした人たちに「安全」を押しつける言説も、
「危険性」を煽り立てて避難を強要するが如き言説も、
ぼくはともに間違っていると考えている。
除染に希望を託すにせよ、
他の土地への避難を選ぶにせよ、
現地の人たちの選択を
ぼくらがどう支えていけるかという問題があるだけだ。
放射性物質は時間とともに居場所を変えていく。
除染をしたはずが、
思わぬところに濃縮していることもある。
正確に捕捉しなければ、除染はままならない。
ぼくは番組のなかでそれを「いたちごっこ」と表現した。
実際、「除染」は困難で、際限のない営為である。
しかし、地元の人たちのことを考えれば、
なんとしてもやり遂げるしかない。
今夜のNスペ「除染 そして、イグネは切り倒された」は、
ぼくが作る番組の例に漏れず、後味は暗く重いはずだ。
決して楽しい番組でないことは請け合うが、
一人でも多くの方に見ていただければと思っています。
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