2012年が終わる。
ぼくはマンションの廊下に出て耳を澄ます。
街のノイズに埋もれるようにして、
遠く、微かに、切れ切れに、除夜の鐘が聞こえる。
北海道の釧路にいれば、
凍てついた空気を通して鐘の音が響く。
あるいは、港に停泊した船が鳴らす霧笛の音が。
そのようにして逝く年を送り、新しい年を迎えてきた。
しかし、ここ荻窪の地では、
煩悩を洗い流してくれるはずの鐘の音が遠い。
だから、ぼくはもう何年分かの煩悩を溜め込んでいる。
おそらく232ヶくらいは溜まっちゃったのではないか。
ぼくは「行く年」、大きな病気をした。
生まれて初めて、手術と入院を体験した。
だから、あと何年、
こうして元気に「来る年」を迎えられるのだろうと思う。
主治医には、5年生存率は75〜85%だと告げられた。
逆に云えば、四分の一弱の確率で、
5年後にはこの世の者ではないことになる。
別に気弱になっているわけではない。
早々にくたばるつもりも毛頭ない。
しかし、生きとし生けるものは必ず死ぬ。
遅いか早いか、畢竟それだけの問題だ。
盛者必衰、会者定離。
瞬間瞬間、生きていることの恐怖…と喝破したのは、
テネシー・ウィリアムズだっただろうか。
限りある命であるゆえに、
過ぎていく一刻一刻を大切に生きたいと思う。
今年は、いままで以上に、
残された時間を慈しみながら生きてみたいと思っている。
中国語では、別れに際して「再見」という。
See you, again…また会いましょう。
みなさん、また会いましょう、ぼくは元気です。
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