週末に鳴子温泉を訪れた。
今回泊まったのは
創業380年という老舗の「旅篭ゆさや」。
時代のついた木造の建物は
国の登録有形文化財に指定されているという。
写真中央の木造二階建てが「ゆさや」で、
隣の緑の屋根の建物が公衆浴場の「滝の湯」だ。
ぼくは熱烈な鳴子温泉マニア(?)だが、
今回は初めて妻を伴ってきた。
一人息子がこの三月で大学を卒業、
就職する会社の独身寮に入るため家を出る。
いまは山形県で自動車免許をとるため合宿中で、
妻は東京のマンションで
ひと足早く一人暮らしになったわけだ。
一人での生活は
ぼくが単身赴任先の仙台から戻るまで続くはずで、
甘えん坊の妻のことだからさぞ淋しがっているだろう、
同時に、長い子育てを“卒業”したわけだから、
ねぎらいの意味もあって鳴子温泉に誘ったのである。
ぼくが仙台を離れれば、
なかなか来られなくなるという計算も働いていた。
鳴子温泉郷には
日本に11種類ある泉質のうち9つが集まっているという。
宿ごとに自家泉源を持っており泉質が違う。
特産の米「ゆきむすび」を始め食べ物も美味しく、
鄙びた、というか適度に草臥れた佇まいも好ましい。
ぼくに言わせれば「日本一の温泉郷」である。
妻はもっと綺麗な建物、
できればホテルに泊まりたいとワガママをいうが、
そこは見解の違いというものである。
「ゆさや」では、
それぞれ泉質の違う三つの風呂に入ることができる。
貸し切り露天風呂の「茜の湯」は弱アルカリ性、
内湯の「うなぎ湯」は
含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉、
アルカリ性で
肌がつるつるになることからこの名がついたという。
妻はきっと「お肌ツルツル」を喜ぶだろうと思って
「ゆさや」に宿を取ったのだが、図星だった。
隣の公衆浴場「滝の湯」の入浴券ももらえるので、
こちらにも入ることができる。
こちらは打って変わって強酸性の湯。
「酸性-含硫黄-
ナトリウム・アルミニウム・カルシウム・鉄(Ⅱ)-
硫酸塩泉(硫化水素型)」というのだそうだ。
ぼくは身体がほとまり、
湯上がりのさっぱりしたこの湯が好きで、
鳴子温泉に来たときには入っていくことが多い。
隣り合った建物でアルカリと酸性、
全く泉質の異なる湯が湧いているのが不思議である。
「ゆさや」は風呂がよくて、食事も旨い。
和洋折衷で、
温野菜のバーミャカウダーなど、
温泉宿としては一風変わった料理もでる。
特にマイタケなど茸の炊き込みご飯は絶品で、
あまり美味しいので夫婦でお櫃を空にしてしまった。
ぼくはふだん酒を飲んだ後はあまり食べないのだが…。
建物が古いのに不満そうだった妻も満足したようで、
翌日は「お肌の張りが全然違う」と喜んでいた。
仕事(鍼灸師)が忙しい妻は
金曜日の最終の新幹線で仙台に来て、
鳴子に一泊して日曜の朝の新幹線で帰っていった。
午後から診療予約が入っているという。
(ぼくも午後から石巻で仕事が入っていた。)
たぶんぼくは6月に単身赴任を終えて東京に帰るが、
息子より遙かに面倒臭いのが帰ってくるので、
それまでは独身生活を満喫するのだと嫌味を言う。
子育てを卒業した妻が、
今度は「亭主育て」を始めようなどと、
間違った了見を起こさないように祈りたいものだ。
コメント
コメントを投稿