以前と同じ「ETV特集」を手がけることになった。
顔見知りの後輩がわざわざ挨拶に来てくれて、
それはいいが、
「3年間のお勤め、ご苦労様です」という言い草は
なんとなく「転勤の挨拶」のようではない。
火曜、水曜とデスク周りを片付けて、
きょうは中三日で再び仙台に舞い戻ってきた。
先日受診したPET検査の結果を聞くのと
(幸い癌の転移・再発はなかった)
あすの夜、
仙台での“遺作”である「東北Z」の放送に立ち会うためだ。
「東北Z」(20日夜8時総合テレビ)は、
原発事故裁判の原告たちへの聞き取りをベースにした番組。
サブタイトルは「原発事故が奪ったものは」とつけた。
福島原発事故をめぐっては
国や東電に損害賠償を求める訴訟が次々に提訴されている。
福島県内はもとより、
首都圏や関西でも福島からの避難者が訴訟を起こした。
すでに全国で20件以上の裁判が進行中で、
原告総数は6千人を超えて、いまなお増え続けている。
そのなかでも最大のものが、
去年福島地方裁判所に提訴された
「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ」訴訟である。
原告数は現時点で2579人。
いまなお自宅に帰れない避難指示区域の住民から、
栃木や茨城など福島に隣接する県に居住していた住民までが
「原発事故で平穏に生活する権利を侵害された」と訴えている。
原告の現在の居住地も、
福島県内は言うに及ばず、遠くは沖縄まで多岐にわたる。
福島県の放射線量を
事故以前の水準(毎時0.04μSv)まで戻す「原状回復」と、
それが達成されるまで
原告一人につき月5万円の慰謝料の支払いを求めている。
番組は裁判の争点を整理しようというものではない。
以前「美味しんぼ」について書いたブログでも触れたが、
ぼくは「原発事故の被害」を
健康被害の有無(あるいはその可能性)だけでみると
低線量被ばくをめぐる神学論争に陥ってしまうと考えている。
低線量被ばくの未知の危険性を否定すべきでないと思うが、
一方で、
福島に残った子どもたちに被害が顕在化しているかといえば、
そんなこともない。
福島の子どもたちの内部被ばくが
ほとんどゼロですんでいることも明らかになっている。
それでは、
顕著な健康被害が今後とも現われなかったとするなら、
福島原発事故の被害は大したことはなかったと言えるのか?
そのことによって国や東電は免責されるのだろうか?
…ぼくはその問いに対する答えを求めて番組を作った。
番組「原発事故が奪ったものは」は
ひとまずぼくの仙台での“遺作”ということになるが、
願わくば東京での再デビュー作として、
「ETV特集」あたりで全国放送にしたいと考えている。
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