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阪神淡路大震災・20年後の現実


明日放送のハートネットTV
「鉄の扉の中の孤独 〜阪神淡路大震災・20年後の現実〜」が完成。
震災後に4万戸が建設された復興住宅(災害公営住宅)の
言わば“盲点”だった高齢者の孤立をテーマにした番組である。
20年間、ボランティアとして被災者の支援にあたってきた
「NPO法人よろず相談室」の牧秀一理事長(写真右)が主人公だ。

牧秀一さんの活動については、
2年前の4月、仙台放送局在任中にも番組にしている。
(「神戸からのメッセージ」というタイトルで全国放送もした。)
今回は言わばその続編で、
震災後20年を迎えて深刻化する復興住宅問題にスポットを当てた。
世間的には神戸はとうに復興したと見られているだろうし、
事実、街を歩いても震災の傷跡などどこにも残されていない。
しかし、復興住宅では、
毎年50人前後の高齢者が誰にも看取られることなく亡くなっている。
いわゆる「孤独死」である。
ぼくが取材したなかには両隣の部屋がともに孤独死した人もいて、
片方の住人は、死後数ヶ月がたってから、
部屋からウジ虫が這い出してきてようやく発見されたのである。
(こうした生々し過ぎる部分については番組では割愛した。)
こうなると、生き残った人にとっても地獄に等しい状況で、
番組のなかで牧さんが話しているように、明日は我が身…である。
最大の復興住宅団地・HAT神戸では、
去年の秋、高齢になった被災者の飛び降り自殺もあった。
マンション形式の復興住宅の場合、
プライバシー重視の「鉄の扉」に阻まれて、
こうした実態はほとんど人の知るところとならない。
世間から忘れ去られたところで、
高齢化した被災者の孤立は深刻化の一途をたどっているのである。

こうした「忘れられた人々」の支援に
20年のあいだ地道に取り組んできた牧さんは、
「街は復興しても、人の心が復興するのは簡単ではない」という。
東日本大震災後の東北での、
牧さんとは比べるべくもないぼくの経験から云っても、
災害で多くを失った人の心が立ち直るのは容易でないことだ。
やがて世間は忘れ、
忘れられた被災者の孤立は深まるばかりである。
牧さんが、そしてぼくが、いま一番危惧していることは、
東北が神戸の轍を踏むことである。
残念ながら、その可能性は高いといわざるを得ない。
震災前から高齢化が進んでいた東北では、
問題はもっと早く、そして深刻なかたちで顕れるのだろう…

今年は3日が仕事始めで、
以来1日も休まず、この番組の編集に当たってきた。
きょうナレーションを入れて番組を完成させ、
明日からは次回作(2月7日放送のETV特集)の編集に入るため、
このまま2月6日まで休みはない。
アラカンの老骨に鞭打って、我ながらよく働いているものだと思う。

ハートネットTV
鉄の扉の中の孤独
〜阪神淡路大震災・20年目の現実〜

放送  1月13日(火) 夜8時
再放送 1月17日(土) 午後3時
    1月20日(火) 午後1時5分

(*いずれもEテレ・29分番組)
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