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指標というのは同一業界で比べないとあまり意味がありません。

だから、ROEを例にとると、全業種を一律ROE20%以上とかでスクリーニングして株を買うようなやり方はあまりイケてないでしょう。(全くダメとは言いませんが…)
ROE10%でも買う価値のある株はあります。


それはなぜかというと、ビジネスの質により最適な資本構成は変わってくるからです。

これはもし自分が銀行員だったらどう考えるかを想像してみると、リアリティを感じやすいんじゃないでしょうか。例えば次の2案件だったら、どちらに金を貸したくなりますか。

  1. ガス会社から「新興住宅開発でガスの需要に供給が追い付かないから、設備投資費用を10億ほど貸してほしい」という案件
  2. 映画制作会社から「この映画はヒット間違いなし!ただ大作ゆえ製作費が足りないから10億ほど貸してほしい」という案件

映画やゲームの制作プロダクションから金を貸してくれと言われて貸す銀行はないでしょう。

すると、そういうところは自己資金(イクイティ)でそれを賄う必要があるため、高い自己資本比率となり、結果的にROEは下がります。しかし、それはその業界にとっては正しい資本構成なのです。仮にバランスシートに腐るほど現金が積み上がっていたとしてもです。

そしてもし本当にヒットすれば、ガスのような堅い事業よりはるかに高い利益となるでしょう。要するに一発逆転型の業種は借入(デット)で資金調達してはいけないのです。

ROEを見る時はそういうビジネスの質も考慮して判断しないといけません。

多くの大企業は財務担当が何十年もその事業に係わって考え続け、そのビジネスに最適という資本構成にしている場合がほとんどです。

なのでちょっと株を勉強した素人が株主総会で
内部留保を配当して代わりに借入を増やせば資本コストが下がって企業価値が増大するじゃないか!なぜしないのか」といった質問をすると、考えの浅さを自ら宣伝しているようなものでイタいですから、こういう事はやめましょう。

とはいっても、中小の同族企業などは本当にダメな資本構成にしている場合もあるので油断できません。

クルマの運転に免許は必要ですが企業の経営には必要ないため、こういう場合もあることはあります。だから指標は同一業種で比較する必要があるのです。

こういう話を予備知識として仕入れたうえで、例えばドコモとソフトバンクの財務諸表を比べたりすると、単なる数字の羅列の裏にある経営ドラマが想像できて楽しいです。



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