脱・日本並み
日本からの旅行者や移住者が、何かにつけストレスを感じるのが、フィリピンでの接客対応。
例えば、そんなに混んでもいないスーパーなのに、やたらとレジで待たされる。レジはたくさんあっても、人件費をケチっているのか2〜3箇所しか人がいなくて、しかも、値段がわからない商品があったり、なぜかカードが使えないなどでストップする。そんな時でもレジのお姉さんは急いだり焦ったりはしないので、余計にイラついたり。
家電製品で不具合があっても保証期間が過ぎていれば、修理屋の連絡先を書いた紙を渡されるだけ。そこに電話しても大抵通じない。何回も電話してやっと来てくれることになったと思い、約束の日時に待っていても連絡なしにすっぽかし。
大工さんに家の修理を頼むと、道具がないから貸してくれ、なんてのはよくあること。雇い主の家の庭にタバコはポイ捨てで、仕事が終わっても掃除もしない。とまぁ、この類の話を書き始めると、一冊の本ができるかも知れません。
だからと言って、フィリピン人が劣っているとか、頭が悪いとか決めつけているうちは、まだまだフィリピンという国の本質が分かっていない。
レジのお姉さん、修理屋の兄ちゃん、大工のオジさんたちの給料を考えてみてほしい。かなり稼ぎがいい人でも、日給(時給じゃないですよ)が1,000円に届くかどうか。大抵は500円程度も貰えばマシな方。いくら物価が安いネグロスでも、家族4〜5人もいれば、相当苦しい生活を強いられます。
これでお客さんの身になって、愛想よくテキパキ仕事しろという方が無理。たとえ頑張っても、経営者の都合ですぐクビになるし、転職が当たり前の社会。勤め先や上司へ義理立てなんかしてたら、この国では生きていけません。
考えてみれば、コンビニやファーストフード店の学生アルバイトにまで、「お客様は神様」式の接客態度を求める日本が異常なんですよ。神や信仰について真剣に考えたことすらない連中に、安易に神様なんて口にしてほしくもない。
フィリピンだって、すっごく高級なレストランやホテルに行けば、ちゃんとしたサービスをしてくれます。チップをはずめば、それこそ下にも置かぬ対応。つまり、素晴らしい接客態度というのは、正当な対価があってこそ。これは世界中どこに行っても通用する常識。
一部の日本人の頭の中には、日本こそあるべき理想で、それに合致しない社会は遅れているという気分が根強くあるようです。しかし、そんな「お客様=神様」精神の代償が何だったか? 誰もがストレスを抱え、過労死・自殺が蔓延する社会が最先端なんでしょうか? 日本が進んでいるのではなく、袋小路に入ってしまっているだけ。低賃金なのに無茶苦茶な要求をされて、それでも死ぬまで働くなんて、奴隷制の時代まで退行しているようなもの。
フィリピンが素晴らしい国だと、手放しで褒める気はまったくないし、日々イライラすることがあるのは事実。それでも日本と比べて、フィリピンが一方的にひどいとは、とても言えない。人それぞれ事情が違うので、フィリピン暮らしが性に合うかどうかは、その人次第。しかし少なくとも私は、日本にいた頃よりも幸せだし、自分の子供を将来日本で働かせたいとも思いません。
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