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またもや、お葬式関係の話題です。
叔父の葬儀の数日前、家内から唐突に、歌ってくれないかと頼まれてしまいました。いかにも歌や踊りのパフォーマンス大好きのフィリピンらしい。

フィリピンでの親戚や友達の前で歌を披露するのは、実はこれが初めてではありません。最初は20年前、私が西ネグロスの州都バコロド市の教会で洗礼を受けた時、儀式の後、神父さまを招いての会食で、家内の叔母に促されたのが最初。

急に言われたので、歌詞もカラオケも何にもなしで、仕方なしにアカペラでハリー・ベラフォンテの曲「Turn Around」を歌いました。ベラフォンテと言っても、私の世代ですら懐メロなので、若い人はまず知らないでしょうね。主に1950〜60年代に活躍したアメリカの歌手で、ダニーボーイやバナナボート(デイ・オー)が有名です。


こう書くと、私がまるでプロの歌手だと勘違いされそうですが、まるっきりの素人。ただ、歌うこと自体は大好きで、カトリック教会に通い始めた頃に、周囲の迷惑を顧みず大声で歌っていたら、それなら聖歌隊へどうぞと言われたのが、人前で歌うきっかけ。ロクに楽譜も読めないのに、ボイストレーニングだけは受けて、パソコンの音楽打ち込みソフトの助けで、毎週聖歌を練習。

そういう経緯なので、発声方法はどちらかというとクラシック。マイクを使ってカラオケで歌うのにはまったく不向きで、たまに家内と一緒にボックスに行くと、声が大きすぎると苦情を申し立てられます。

その後も、日本語はもちろん、教会のミサで歌うためにラテン語や英語、家内と結婚してからはタガログ語も少し暗譜。なので移住してからも、たまに「一曲頼む」とお願いされるわけです。

さて、今回は家内から指定されたのが「千の風になって」。日本では社会現象と呼ばれるほど流行ったこの曲。その頃、家内は私と一緒に日本に住んでいて、私が毎日のように家で聴いていたこともあり、一時は耳タコ状態。原詩は、アメリカ人のメアリー・フライという女性が書いたものだとされる「Do not stand at my grave and weep」。日本語版は2001年、新井満さんが訳詩・作曲して自分で歌い、2006年の秋川雅史さんの歌で、広く知られるようになりました。

ご存知のように詩の内容は、おおよそキリスト教の死生観とは異なり、死んでも天国へ行くのではなく、千の風や優しい日の光、雪や星になって、生前に愛した人を見守り続けるというもの。日本人の感性にはぴったりだったのか、好きな人が多いですね。

日本語を解する人が皆無のフィリピンなので、新井満さんのものではなく、キャサリン・ジェンキンスさんの、原詩での曲を歌いました。因みに英語でYouTubeを検索すると、同じ歌詞で何曲もの異なったメロディの「千の風」があることが分かります。


当日、バコロドの墓地の中にあるチャペルでの葬儀ミサの後、またもカラオケもマイクもなしのアカペラ。100名以上の参列者の前で無事歌い終わりました。後でみんなに聞いてみたら、家内以外に、この曲や詩について知ってる人は誰もいませんでした。とてもソウルフルで良い歌だと言ってくれましたが、やっぱり思いっきりカトリック大国のフィリピンでは、あまりピンとこないのか、そんなに有名ではないらしい。

それにしても、フィリピンの墓地は、墓石を立てずにプレート状にして埋め込むタイプが多く、広々とした空間があって「千の風」が似合います。特に親しい人を亡くした直後この歌詞を口ずさむと、救われた気持ちになりますね。


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