この理由として、主に3つの点が挙げられると思います。
- スタックしやすい
- 坂道発進が苦手
- コーナリングでリアが滑って怖い
どれもそれなりに当てはまりますが、すべてのFRがそうとは限りません。
というのも、こちらの記事でも書いたBMWのFRモデルの雪道での強さ。
ここから得たのは、意外にそうでもない事実という体験。
その詳細は上のリンク先に譲りますが、果たしてこれを理屈で考えるとどうなんだろうとふと思い立ち、それなりに理論的に考えることができたのでネタにしてみます。
検証したのは、以下の3タイプです。
- フロントエンジン・前輪駆動(いわゆる『FF』です。)
- フロントエンジン・後輪駆動(いわゆる『FR』です。)
- フロントミッドシップエンジン・後輪駆動(『FMR』、BMWのFRモデルはこれです。)
数値的な仮定は、以下の通りです。
- 車重は1,500kg(すべてに共通)
- ホイールベースは2.8m(すべてに共通)
- 前後重量配分は、60:40(FFとFR)、50:50(MFRのみ)
- 高さ方向の重心はGL+0.5m(すべてに共通)
- トルクや路面とタイヤの摩擦係数(μ値)などのその他諸条件はすべて同じ
そんなわけで、各々検証してみましょう。
【スタック編】
まずは、FFから。
FFはエンジンを横置きにしてトランスミッションをその隣に置くという構造上、フロントが重くなります。
フロントが重い状態で前に進むということは、クルマを進ませようとする力はこう働きます。
雪道でいえば、掘り進む方向に力が働くわけです。
私がFFって意外に雪に弱いと思っているのは、これが故です。
確かに駆動輪であるフロントに荷重がかかっていることでトラクションを稼ぐことはできますが、スタックから脱出するのって乗り越えようとするシーンがほとんどであるところ、これでは逆効果です。
ただし、FFはスタックに対しての後退は案外まともな働きをします。
というのも、リア荷重が多めのRR状態となるわけで、力が働く方向がやや上向きに作用するからです。
ですので、FFの場合はスタックしそうになったら少し後退し、再度勢いをつけてハマりそうになった箇所を乗り越えることで、スタックを回避することが可能です。
とはいえ、重量配分が悪い状態のRR、しかも操舵輪と駆動輪が一緒というのは、決してコントロール性がよいわけではなく。
特に、トルクが細いとかなり大変です。
続いて、FR。
とはいっても、一般的なフロントヘビーなものです。
こちらについては定説通り雪に弱く、特にスタックにはかなり弱いでしょう。
というのも、駆動輪である後輪が軽いことでトラクションがかかりにくく、しかも進もうとする力の向きが写真の通り斜め下方向になってしまうからです。
トラクションがかからない上にかかったとしても潜る方向に力が働くって、雪道で乗る乗り物じゃないと言われる所以がよくわかりました。
唯一の救いは、後退かな?
一応、スタックに対して脱出する方向に力が働くので。
でもこれも、結局はトラクションがかかっていないことで非力になり、脱出どころじゃないということがほとんどでしょう。
最後に、FMR。
同じFRでも雪道のスタックに対して強いのが、理論的にも証明できました。
百聞は一見に如かず。
ご覧の通り、50:50の重量配分は駆動輪である後輪に適切なトラクションを与えるだけでなく、しっかりと路面に対して平行にクルマを走らせる力が働くわけです。
これであればスタックしかけても、きちんと前に進む力が働くことで脱出できる可能性が高まるわけです。
そしてこれは、後退時にも有効です。
駆動輪に適切にトラクションがかかるだけでなく、こちらも路面に対して平行に進もうと力が働くので、ハマりそうになっても脱出しやすかったりします。
そしてこれは、後退時の操作性のよさにもつながっているんですよね。
BMW 3シリーズ(F30)に乗って驚いたことの一つが深雪での後退の強さと操りやすさだったのですが、これを考察してようやくそれが理解できました。
経験則も加えますと、スタックしそうになったら無理せずに、前に後ろに振り子のように踏み固めてからエイッと進めば脱出できる(『振り子脱出法』と命名)ことがほとんどですが、それはこの前後重量配分の均等化からくる路面に対して平行に進む力が、前進でも後退でも生じるが故なのでしょう。
ちなみにこの振り子脱出法はFFでも当然やってきましたが、FMRはそれよりもかなりやりやすく、横ぶれせずに安定して早く脱出できることが多いです。
以上よりスタックのしにくさは、FMR > FF > FR というのが、私の中の答えです。
【坂道発進編】
道路勾配は
すみません…、角度とパーセント勾配を混同しちゃってましたm(_ _)m
数値として使ったのは、上で訂正させて頂いた通り『5°』と『10°』です。
5°の場合パーセント勾配は8.7%(普通道路の設計速度50km/hの場合の例外に相当)、10°の場合パーセント勾配は17.6%(公道での限度は12%なのであまりないかな?汗)となります。
お詫びして訂正しますm(_ _)m
なお、下の画像も差し替えてあります。
で、計算は三角関数を使うんだろうなってのは分かったものの、具体的な手順が分からなかったのでこちらを参照して数字を当てはめて計算してみました。
そんなこんなで、まずはFFから。
計算してみたら、勾配による重量配分の変化って思ったよりも大きくないんですね。
で、これを考察してみて思ったのは、やっぱりな~ってこと。
なんでかというと、FFに乗っていたときに坂道が凍結していた時、そこが一時停止だったので律儀に止まって出ようとしたのですが、なかなかの勾配だったことからキュルキュルいって発進できなかったことがあったんですよ。
その理由が、これを作ってよくわかりました。
ご覧の通りトラクションの有効性に影響が大きいフロントへの重量配分が減ることに加え、ここでもやはりフロントヘビーが路面に対して平行に進む力を与えず、むしろ路面に潜るような方向の力が生じてしまうので、それが抵抗となっていたと考えられるんですよね。
本当はそこまで数値として算定できればいいんでしょうが、私の頭では算式がわかったとて絶対に答えを出せるわけがないため割愛(苦笑)
生まれ変わったら頭がいい人になりたいですw
続いて、(フロントヘビーな)FR。
こちらについては調べるまでもなく最悪というのは分かっていたんですが、調べたらもっと最悪だということがわかっちゃいました(笑)
ね?いかにも進まない感じでしょ?
勾配がついても重量が後輪にさほど配分されないことでトラクションを稼げず、しかも進もうとする力が坂道に対して平行ではなく抵抗が生まれる角度に力が生ずるという。
こりゃ、雪道や凍結路の坂道でFRは発進できなくなるわけだ。
最後に、FMR。
こちらも百聞は一見に如かず。
ご覧の通り、後輪に多めに重量が配分されることで、さらにトラクションを稼げます。
ちなみにFFよりも重量配分の変化が若干大きいのは、前後方向の重心がFFよりも後ろにあるためです。
加えて、前が若干軽くなることで力が働く方向も、路面に対して抵抗とならない向きになるわけで。
これらがあったから、ツルッツルの凍結路でも坂道発進できたんでしょう。
☞BMW 3シリーズ(F30)、後輪駆動(RWD, FR)でもツルッツルに凍った坂道発進で楽勝だった件 ~それで浮かれてドリフトした結果・・・~
なおどこかの記事で、電子デバイスのおかげでFRは雪道で何とか走れるようになっただけで、本質的にFFより弱いって感じの記述がありましたが。
いまどき電子デバイスありきで設計されている自動車に対して、何言ってるんだろう?って思いました。
エンジンやトランスミッションも含めて電子デバイスがなければそもそも動かすことさえできない現代において、的外れもいいところな意見に思えます。
そんなわけで坂道発進についても、FMR > FF > FR というのが、私の中の答えでした。
【コーナリング編】
こちらは、ほぼオマケです(笑)
というのも、雪道運転のみならずそもそもの運転に関する技量やタイヤの良し悪し、カーブの角度や横断方向の勾配なんかも色々と複雑に絡むため、スタックや坂道発進のように一定の仮定で定量的に示せないんですよね。
なので、タイトルで理論と謳っておきながら、ここはしらッと体験談と感覚で書いちゃいますw
FFですが、コーナリング中に滑り始めるとめっちゃ怖いです。
というのも、そもそもフロントヘビーでコントロールが難しいところにきて、操舵輪=駆動輪となるためアクセルを入れても外に膨らむだけ。
いわゆるアンダーステア状態になるわけですが、自然に滑るかアンダーステアかしか選択肢がなく、しかもそのコントロール性が悪いという車種がほとんどです。
というか、FF車でコントロール不能に陥ったこと、結構ある人です。
かれこれ十数年前の話になりますが、30km/h程度の低速直進でありながら、轍から外れた瞬間に前輪を取られてアッという間に180度ターンしていたってこともありましたね~。
さいわい道路脇の側溝への転落を免れ、対向車も後続車もいなかったので事なきを得ましたが、なかなか焦った事案です。
スタッドレスタイヤの性能も今ほどよくなかったというのもあるのでしょうが、FFってこういう風に制御不能に陥ることが、年に数回はあったように記憶しています。
(フロントヘビーの)FRについては、具体的な経験がないため書かないでおきます。
経験がないことを書くのであれば、スタック編や坂道発進編のように理詰めで書かなければ説得力に欠けますので。
というわけで、割愛。
FMRについては、滑っても怖くないどころかそれをコントロールできます。
というのも、重量配分がよいので滑ってもクルマを操れるんですよね。
まして駆動輪が後輪ですから、アクセルオンでオーバーステアにできますし、それが過ぎればアクセルオフしてカウンターステアを当てればいいだけですし、何度も書きますが重量配分がいいとそのコントロールも難しくありません。
もちろんそうならない速度で走るのが大原則ですが、雪道では想定外のことが起きやすいので、可能であればその辺のコントロールを危険回避術として身に着けておくといいでしょうね。
ちなみにこれの応用で、先日やったことを一つ(長文です)。
その日は大雪明けの日ながら休日ということもあり、除雪は大きい通りだけに限られていましたが、運悪く休日出勤でした。
会社の前の道路は除雪の順位が低い低級路線の市道、そこにつながる1本前の大通りは県道で除雪が早く来るようなところです。
この組み合わせって意外によくなくて、大通りの県道で除雪されて固まった雪が、低級路線の市道との接続部にこんもり溜まることになるんですよ(雪国住まいの方は分かりますよね)。
しかも、休日の早朝ということもあって誰もそこを通っていなくて、まさに除雪したての雪が積まれた状態。。
しかしながら、それを乗り越えなければ会社に辿り着けません(一瞬「やっぱ休もうかな」と思ったのはここだけの話しw)。
で、それを乗り越えるために使ったのが、ドリフトです。
もちろん周囲に車も人もいない&絶対に出てこないことをきちんと確認したうえでですが、その除雪されて固まった重くて湿った雪の溜まり場に対して、DSCオフ(DTCオン)に切り替えてドリフトで滑らせながら突っ込み、カウンターステアを当てながらトラクションをかけて乗り越えた次第です。
なぜそんなことをしたかというと、勢いをつけて曲がるためにはドリフトしかないことと、横滑りさせながら縦方向にトラクションをかけることで雪をしっかり噛んで駆動力を最大にできるだろうとの読みからでしたが、その目論見は見事に当たり、難なく乗り越えられた次第です。
もちろん、それをやるだけのスペースがあることも分かっていましたし、何度も書きますが絶対に車や人がいない&出てこないシチュエーションでの話です。
これらの読みや前提条件が一つでも崩れていたら、危なくてやるべきじゃないでしょうね。
とはいえ、そんな使い方で4WDでさえスタックしかける状況を、後輪駆動ならではのドリフトでいなせたのは、予想外の収穫でした。
そんなわけでコーナリング編は、FMR > FF (FRは無評価)が私の答えです。
と、色々と書いてきましたが。
安全に走るには、駆動輪がどうとか重量配分がどうとか以上に大切なことがあります。
それは、ドライバー自身の意識。
これに勝るものはありません。
クルマがいかに雪に対して強くて安定していようとも、ドライバーが無茶したらそちらの方がよっぽど危険です。
そんなわけで、最後に雪道の安全運転で重要な5つのことでも書いておこうと思います。
- 路面状況にあった速度で走る。
- まともなスタッドレスタイヤを履く。
- 急の付く動作(急加速・急停止・急ハンドル)はしない。
- 少しでも無理だと思ったら、絶対に無理しない。
- 雪道で安全に走れるルートがあれば、遠回りしてでも時間がかかってもそちらを選ぶ。できれば予めルートを調べて決めておく。
というわけで、また寒波が来るようですが。
どうぞ皆さま、ご安全に。
んでは!
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