先週記事にした、DPFクリーニング。
あれからまた色々調べたり、Carlyを使ってDPFで捕集している微粒子状物質の溜まり具合のデータを取ったりしていたら、あれこれ気づくことがあったのでネタにします。
結論から言うと、日本で販売されているBMWのクリーンディーゼルについては、走り方やオイル交換をよほど大きく間違えていなければDPFに問題が生じる可能性は極めて低い、ということです。
以下にて、Carlyで取ったデータに基づき考察してみます。
まずもって、DPFとはなんぞや?ってところからですが。
略さないと"Diesel Particulate Filter"と綴られるこれ、日本語訳すると「ディーゼル微粒子状物質捕集フィルター」となります。
(1の中にDPFがあります。)
ディーゼルは燃焼過程において、煤(Soot mass)や灰(Ash mass)を出します。
煤(Soot mass)は不完全燃焼からくるもので燃料である軽油から由来するもの、灰(Ash mass)はエンジンオイルや燃料添加剤などに含まれる成分(代表的なのはエンジンオイルの硫酸灰分)が燃えて生じるもの、となります。
ディーゼルはその性質からどうしても燃焼過程においてこれらを発生させるのですが、そのまま大気に排出しては環境汚染につながります。
これを防止するため、DPFでこれら微粒子状物質を捕集してから、マフラーを通じて排気するのです(ついでに言えばNOxを低減させるための触媒や尿素噴射装置がその後に控えていて、NOxも低減させて大気に排出します)。
で、このDPFはエンジンからの排気がある都度微粒子状物質を捕集しているのですが、当然ながらそのフィルターの目は詰まってきます(空気清浄機のHEPAフィルターもそうですよね)。
そして目が詰まってくると起きるのが「DPF再生」というものですが、これによってフィルターがきれいに再生されることになっています。
このDPF再生ですが、ほとんどの場合、排気行程で燃料(軽油)を噴射してDPFにそれを吹きかけ、排気熱で微粒子状物質を燃やすことで再生しています。
なお、このDPF再生のプロセスにおいて噴射された燃料(軽油)はエンジンオイルに混ざることが不可避らしく(排気行程でピストン内に噴射されるため)、以前DIYでオイル交換した際にオイルエレメントを外さない状態で規定量いっぱいのオイルが抜けたことは、これがためのようです。
ここで一つのことに気づきます。
DPF再生の方法は、燃料(軽油)を吹きかけて微粒子状物質を焼き切ることですが、それって2つある微粒子状物質のうちの両方とも有効かといえばそうではないんですよね。
つまり、不完全燃焼からくる煤(Soot mass)についてはそれが通用しますが、完全燃焼して生じた灰(Ash mass)には通用しないわけです。
つまり、DPF再生は厳密には煤(Soot mass)にのみ作用するということになります。
・・・と、ウンチクを垂れたところで。
そろそろ、データと付き合わせて考察しましょうか。
【煤(Soot mass)について】
◆5月27日:定点観測
◆5月28日:夕方の通勤時(3km、車の流れはいいけど坂が多いルート)
◆5月29日:朝の通勤時(3km、信号が多い市街地ルート)
◆6月2日:定点観測
◆6月2日:DPF再生後①
◆6月2日:DPF再生後②
ざっとこんな感じですが。
通勤時は片道3kmのちょい乗りで、気温15~20℃のこの時期でも到着する頃にようやく油温計が60〜70℃位を指すといったところです。
つまり排気温度はDPF再生できるほどにならないのかなって思っていたのですが、5月29日より6月2日の値の方が下がっていることから、この間にDPF再生が起きたようです。
その間は通勤にしか使っていなかったですし、早出と残業続きで寄り道もしていないので、片道3kmの通勤時のいつかのタイミングでDPF再生が行われた模様です。
したがって、DPF再生はちょい乗り中でも発動するということが分かりました。
6月2日のDPF再生は、Carlyから強制的に発動させました。
注意書きには「あまり頻繁にやらないでね」的なことが書かれていたので、なるべく使わないほうがいいようですが(笑)
DPF再生は走行中に行われているのかなと思いきや、最後のフラットやや上がり気味からカクンと急降下している辺りはアイドリング中でしたので、その間にも行われていたのかもしれません。
急降下のそれが若干不思議ですが、DPF再生後のデータも不安定になっているのを考えると、再生中と再生直後はデータが不安定になりやすいのかもですね(センサーの関係でしょうか?)。
いずれにせよ、通勤時片道3km程度でもDPF再生が発動することがわかりました。
また、DPF再生でかなりの煤(Soot mass)が取れていたので、煤(Soot mass)に関してはあまり気にしなくていいのかなと思います。
【灰(Ash mass)について】
- 5月27日 17:08 ・・・ 9.552134g
- 5月28日 19:34 ・・・ 9.552134g(通勤往復6km走行後)
- 6月2日 12:13 ・・・ 9.597911g(通勤往復6km×3日+10km程度走行後)
- 6月2日 12:14 ・・・ 10.360861g(DPF再生発動直後)
- 6月2日 13:57 ・・・ 10.360861g(DPF再生完了から20km程度走行後)
灰(Ash mass)については動きがあまりにも少ないため、このような表記としました。
通勤時はそれほど溜まっていませんでしたが、6月2日は急に増えています。
先述の通りDPF再生中から直後はセンサーやデータが不安定になるようなのでそれも関連している可能性もありますが、6月2日の午前中にある走り方をしてしまったことも関連しているのかなと。
というのは、娘を習い事に送る際ちょっと時間が巻き巻きだったため、エンジンが暖機する前にぶん回してしまったんですよね。。
で、320dの取説には「頻繁にスポーツ走行を繰り返すとエンジンオイルが減ることがあります。」みたいな記載があり、これってつまり、ぶん回すとオイル上がりが若干なりとも発生するということにほかならないわけで。
しかもそれはエンジンが暖まり切る前、つまりピストンリングとシリンダーの隙間が縮まる or オイルが柔らかくなってオイルリングの摺動に対しての追随性がよくなる前という、よりオイル上りが生じやすい状況なわけで。
オイル上がりが生じるってことはオイルが燃えるってことであり、それによってその中にある硫酸灰分の燃焼により灰(Ash mass)が生成されるということになるわけで、それが暖機前のぶん回しで助長された、ということかな…と。
いずれにせよ、灰(Ash mass)が生成されるのは燃料(軽油)以外の物質、特にエンジンオイルが燃焼することで起きますので、エンジンオイルが上がりやすい暖気前のぶん回しやスポーツ走行は避けるべきですね。
また、「灰(Ash mass)が生成されるのは燃料(軽油)以外の物質により起きる」ということは、燃焼ラインに入れるものは何であれ、これに気を配る必要があります。
つまり、エンジンオイルの銘柄(低硫酸灰分…LL04承認オイルはこれを満たしています)だけでなく、燃料添加剤やオイル添加剤、RECSなどの吸気系統のクリーニング用のケミカル、さらにDPFクリーニング用のケミカルなんかにも注意が必要ということになります。
そう考えると、少なくともエンジンオイルはLL04のみとし、燃料添加剤はBMW純正のもの以外は使わないほうが良さそうです。
なお、いろいろ調べたのですが、DPFから灰(Ash mass)を除去するのってかなり難しそうですね。
先述の通り完全燃焼による生成物なのでこれ以上燃やせませんし、灰といっても色々な性状があるようで溶かすにもそれを把握しないと何が有効か分からないようですし。
そう考えると、先週書いた各種DPFクリーニングの類がそもそもこの灰(Ash mass)に対してどこまで効くかは未知数です。
ちなみに私がオーダーした『JLM DPFクリーナー J02210』ですが、英文の商品説明を読む限り灰(Ash mass)には有効でないような記載が見受けられました(日本の商品説明はどこもこのセンテンスを引用していませんが)。
これを読む限り他の燃料添加剤においても灰(Ash mass)を除去する有効性が無いばかりか、その添加物(金属系添加剤など)によっては灰(Ash mass)の生成を助長してしまうことにもなりかねないようです。
余談ですが、『JLM DPFクリーナー J02210』は個人輸入でオーダーしたものの可燃物につき航空便搭載不可とのことで、キャンセルとなりました。(結果オーライということでw)
【私の結論】
そんなわけで、今回わかったことですが。
- 煤(Soot mass)については、そうシビアに考える必要はない。
- 灰(Ash mass)については、極力発生させないことが大切。
煤(Soot mass)は、3km程度のちょい乗りのタイミングでもDPF再生が発動して有効に除去できます。
ですので、上述の通りそうシビアに考える必要はなく、DPFクリーニングはおろか燃料添加剤もいらないということになります。
デフォルトのDPF再生のみで、必要十分なんだと思います。
灰(Ash mass)については、先述の通り有効に除去する方法が見つかりません。
先週書いた各種DPFクリーニングの類の内、プロショップが施工するようなものでも、どこまで有効か分かりませんね。
この点、施工前後の数値比較を示してくれると納得性はあるので、ぜひともその辺を開示してもらいたいところです。
ただまあ、灰(Ash mass)の除去において、化学的な方法(溶かすなど)は難しいうえにその後ろにある触媒への影響を考えると、プロショップ施工にしてもあまり気が乗らない方法なんですよね。
とどのつまり、DPFから灰(Ash mass)を除去するには、風圧や水圧で物理的に押し出したり流しだしたりするのが最も理に適っているのだと思います。
ですが、DPFをユニット(触媒も一緒です)から外してそんなことできるかと言えば難しいでしょうし、仮にできたとて費用面が目に余る結果となるのは火を見るより明らかでしょう。
というわけで、灰(Ash mass)の結論としては、極力それを発生させないように気を付ける、ということだけのような気がします。
そして、その具体的な方法とは、
- 暖機前のぶん回し・スポーツ走行は避け、暖機後であっても過度のそれらは頻繁にすべきでない。
- エンジンオイルは低硫酸灰分のLL04承認オイルを使い、オイル添加材は使わない。
- 燃料添加剤にも気を配り、できればBMW純正燃料添加剤以外は使わない。
といったところかなと思っています。
とまあ、神経質に色々と書いてきましたが。
結局は論より証拠、不具合が実際に生じていなければそれでいいわけで。
今回、日本もヨーロッパも調べたのですが、心配している人は多いものの、実際の不具合はまるで見当たりませんでした。
(ソースは、日本では国交省不具合情報検索サイトなど、海外ではBIMMERPOSTなどです。)
もっとも、DPF搭載がEUで義務付けられて間もなくのモデル(E90など)で若干DPF詰まりの不具合はありましたが、少なくとも日本への正規輸入が始まったモデルイヤー以降でその類の不具合は見つけられなかったんですよね。
ちなみに、欧州でもちょい乗りしかされない方がいらっしゃいましたが不具合が出ている様子はありせんでしたし(心配はされていましたが)、10万kmを超えても何ら不具合が生じていないという方もいらっしゃいました。
何より、モデル末期になりながらも日本の輸入車販売台数TOP10にエントリーし続けているF30/F31、その半数程度がクリーンディーゼルで出ているとのことですが、それだけ多くの人が乗っている320dにおいてDPFの不具合は見当たらず、販売開始から5年を経過しているにもかかわらずこの状況というのが、何よりの証拠なんじゃないでしょうか。
以上を総合すると、少なくとも日本で販売されているBMWのクリーンディーゼルモデルは、DPFに対して特別の措置やクリーニングをする必要性はない、というのが私の結論です。
ただまあ、プロショップがしっかりとDPFクリーニングの前後比較データ(特に灰の除去具合)を開示してくれ、数値的にその有効性が確認できれば、前向きに検討しようとは思っています。
もっとも、触媒への負の影響が長期的にないことも確認出来てから、ということは言うまでもありませんが。(←やっぱり神経質な私w)
【追記@2018/06/10 12:50】
暖機~郊外~高速道路で、煤(soot mass)と灰(Ash mass)がどう変化するのか、またエンジン回転数とどのような相関性があるのか、データを取って見てみました。
走行したのは、市街地(3km・8分)→郊外(18km・18分)→高速道路(21km・13分)→市街地(1km・3分)といった感じです。
煤(soot mass)については、暖機完了前または低回転域での走行が続いた場合に増加しやすい傾向が見てとれました。
また、暖機が済んでからは、ある程度エンジン回転数が上がった状態が続くと減少するようで、特に後半、高速道路でエンジン回転数を上げ気味で走り続けたら煤(soot mass)の値がぐんぐん減っていきました。
こちらが、その結果です。
左軸と水色のラインが煤(soot mass)の堆積重量(g)、右軸とオレンジのラインがエンジン回転数(rpm)になります。
横軸が詰まり気味でしたので、以下にて3つのステージに分けてみました。
これを見ると、高速道路に時々乗ってスポーツモードとかでエンジン回転数を上げてやりさえすれば、人為的なDPFクリーニングはまったく必要なさそうですね。
一方、灰(Ash mass)は変化がありませんでしたが、それはおそらく暖機完了前にエンジン回転数を上げなかったためと思われます。
暖機が済んだ後であれば、4,000rpm近くまで引っ張っても灰(Ash mass)は生じていなかったので、注意するのは暖機完了前のぶん回しに限るようですね。
経験則ですが、暖機完了前に2,500~3,000rpm以上ぶん回してしまうと若干なりともオイル上りが生じ、灰(Ash mass)が生成されやすいように思います。
そんなこんなの、追記でした。
んでは!
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