素材が“ナマモノ”なので、状況が刻一刻と変わる。
会社の再建を請け負ったS社長は閃きがあるうえに決断が早い。
きょうは昭和20〜30年代のT食品の佃煮のラベルを見て、いきなり「これを復刻しよう」と云い出した。
T食品の佃煮や煮豆は味がいいというので評判をとり、地元の定番商品だった時代のものだ。
地元の顧客に質のよい食材を提供しようというところから始まった
T食品の創業の原点がこのラベルに象徴されていると判断したのである。
さっそく、当時ラベルの印刷を請け負った地元の会社(社長は84歳でまだ現役)が呼び出され、
来週までに「復刻版」のラベルの見本を作るように依頼された。
(いまはラベルに賞味期限表示が必要だし、商品名も変わっているので、往時と全く同じにはならない。)
この会社はT食品に売り掛けがあり、
民事再生法の適用(きのう決定が出た)によって100万円ほどの損害を出したはずだが、
老社長は「人生には躓くこともある。これに挫けず、これからはもっと取引を増やそう」と
ちょうど息子の年代にあたるT食品のN.S.社長を励ましているのだという。
いい話だ。
こうした状況の変化は番組の「想定内」だから驚かないが、
きのう管財人の弁護士から
“Xデイ”のシーンは民事再生のカタがつくまで放送しないで欲しいと申し入れられたのには参った。
取引先も銀行も従業員も知らなかった民事再生法申請の事実をマスコミが事前に察知していたとあっては、
債権者のなかにはT食品への不信感を募らせる人も出てきかねない、
ひいては民事再生の行方に思わぬ影響を及ぼしかねないというのである。
こちらの立場から云えば過剰反応だとは思うが、
石橋を叩いて渡ることで民事再生を成功裡に成し遂げたいという責任感、職業的な倫理観はよく解るので、
申し入れの趣旨に従うことにした。
しかし、そうすると9月20日の放送には、
(弁護士さんの言葉を借りれば)「一番脂っこい」シーンを使えなくなってしまい、
その穴をどうやって埋めようかと頭を悩ませるハメになった。
当初企画したように、中小企業のM&A(企業売買)の実態により重心を移した番組にするほかあるまい、
そう考えてM&Aの仲介会社に更なる情報提供をお願いしたところ、きょうさっそく返事が来た。
新潟県の造り酒屋(名前は書けないが定評のある蔵)が後継者不在のため、
異業種の一部上場企業(子会社として居酒屋チェーンを持っているので全く無関係とは言えない…)に
会社を売るという話がちょうど大詰めを迎えているのだという。
売り手の造り酒屋の社長に打診してもらうと取材を受けてもいいという話のようだ。
他ならぬ日本酒の話とあっては、取材しないわけにはいかない(笑)。
明日一度東京に帰るので、明後日にM&A仲介会社の担当者と会い、早ければ週末にも新潟に飛ぶ予定。
そして、日曜日の夜には再び旭川に取って返して、「復刻版」をめぐる動きを撮る。
佃煮業界にとっては天下分目の年末商戦の準備が早くも始まろうとしていて、
そこに「復刻版」をぶつけるかどうかがT食品再生戦略のひとつのポイントになりそうだ。
他にも、M&A仲介会社の社長(貴重な情報源であり、酒飲み仲間でもある)が、
これも不況が深刻な沖縄で企業売買に関するセミナーを行なうという話があって、取材を申し入れている。
主催は地元の地銀だが、そちらのOKが出れば来週中に札幌から沖縄に飛ぶ予定。
そんなこんなで、しっちゃかめっちゃか。
なにせ来週のロケ・スケジュールがまだ固まっていないのだから恐ろしい。
旭川、札幌、東京、那覇、新潟…一週間後、来週の水曜日に、ぼくは果たして何処の町にいるのだろう?
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