興味のないぼくだが、
三友チーズの「解禁」ともなれば話が違う。
12月1日が「山のチーズ」の解禁日なので、
さっそく取り寄せて食べた。
いま日本の酪農の主流は、
栄養価の高い穀物飼料を大量に食べさせ、
効率よくミルクを搾ろうというスタイルだ。
ところが、
東北海道の中標津町にある三友牧場は、
そうした経済性優先の風潮に背を向けて、
頑ななまでに放牧と土作りにこだわっている。
規模拡大は行なわず、搾乳牛は30頭。
この地方の酪農家としては小規模経営である。
夫の盛行さんが搾った良質の牛乳を原料に
妻の由美子さんがチーズを作る。
「山のチーズ」は、
夏に放牧して青草をたっぷり食べさせた牛の乳を原料に6ヶ月間の熟成を行なったハード・チーズだ。
穀物飼料を大量に食べさせた牛の乳からはこうしたチーズは作れないそうで、
逆にいえば、放牧にこだわる三友牧場の牛乳があって初めて作ることができるチーズである。
草に含まれたカロチンの関係なのか色は強い黄色みを帯びていて、食べると実に豊潤でコクがある。
口の中で旨みがじんわりと広がるのである。
先日、羅臼の帰りに三友牧場を訪ねて買ってきたハードチーズが残っていたので食べ比べたが、
(こちらは冬場に乾草を食べさせた牛の乳から作ったもので、見た目がもっと白っぽい)
同じ三友さんのチーズでも「これほどか」というほど味が違う。
乾草のチーズも充分おいしいとは思うのだが、
青草を食べさせた「山のチーズ」の濃密な味わいと比べるとひとたまりもない。
特に「山のチーズ」には16ヶ月以上の長期熟成をした「グリーンラベル」があり(写真)、
今年は満足できる熟成のものがあまりできなかったというので小さな塊をひとつだけ買ったが、
このチーズの美味しさといったら「ただごとではない」。
いたずらに経済効率を追求せず「農」の基本に忠実に作られた原料があって、
それをまた菌の力を借りてじっくりと気長に熟成させて初めて生まれる“醍醐味”。
おいしいチーズを頬張りながら、「食の原点」について考えてみたりする。
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