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花を愛でる余裕もなく…

夕方の飛行機で東京に帰ってきた。
雲の切れ間から東京湾、
千葉港あたりの夕暮れが見えた。

東京は桜が盛りを迎えていて、
首都高は“花見渋滞”で混みあっている。
ぼくは明日からまた出張なので、
今年は桜を愉しむ余裕がない。
高速を走るタクシーのなかから束の間の花見。

会社に戻って出張報告書などの伝票を処理する。
年々事務手続きが煩瑣になっていて、
何の創造性もない
“雑用”に取られる時間が長くなってきている。
出張で疲れて帰ってきた後に
2時間も書類書きに追われるのでは堪らない。

妻はまだ上海、息子は大学の新入生オリエンテーションだとかで出かけている。
家に帰っても誰もいない。
無性に旨いものが食べたくなって、
仕事を終えてタクシーで下北沢の「小笹寿司」に向かう。
静かな夜で、客はぼくだけ。
この店では酒は日本酒を温燗で2合と決めているのだが、
きょうは喉が渇いてしょうがないのでエビスの小瓶を注文する。
ビールを一口に煽った瞬間、自分が酷く疲れていることに気がついた。

久しぶりの寿司はしみじみと旨かった。
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