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一人で温泉旅行に出かけた。
行先は山形県の肘折温泉郷である。
二泊の予定で、きょうは「湯宿 元河原湯」に宿泊した。

番組を作るという仕事はこれでけっこう消耗するものである。
一本作り終えると、緊張が解けて、一気に疲れが出るケースが多い。
今回は年末年始をはさんだ仕事であり、
放射能汚染というテーマがテーマだから、
いつに増して疲労感を感じていた。
妻が週末も仕事を抱えていて動けないし、
遺憾ながらスペアで連れていく女性にも心当たりがなかったので、
何年ぶりかで温泉に一人旅をすることになった。
独身時代は、けっこう一人で温泉めぐりをしたものだったが。

仙台からバスで2時間余りで新庄。
さらに宿の送迎バスで50分ほど行ったところに肘折温泉はある。
このあたりは雪深いところで、
温泉までの道は両側がぼくの背丈より高い雪の壁だったりする。
活火山のカルデラの中に開けた温泉郷で、秘湯といっていいだろう。
宿に荷物を置いて周辺を歩いてみた。


温泉街は10分も歩けば一周できる規模。
宿の数はそれなりにあるが、
雪に降りこめられた冬は賑わっているようには見えない。
土曜の午後だというのに、観光客らしい人は3組に行き合ったのみ。
「鄙びた」というより「寂れた」という言葉の方が似合いそうだ。
もっとも、ぼくはこういう雰囲気が嫌いではない。


温泉街にちょっとキュートな建物があった。
元の肘折郵便局(現在は川の対岸に新築移転している)。
いまは使われていないようだが、
歴史のある湯治場に似合いの建物である。
(肘折温泉が発見されたのは大同元年、西暦807年という話だ。)


温泉街の外れに、川をはさんで一軒だけ温泉宿があって、
雪に埋もれたその佇まいに心惹かれた。
ぼくが泊まった「元河原湯」と同様、
「日本秘湯を守る会」の会員旅館で「葉山館」という。
今度きた時にはここに泊まってみたいな、と思った。

「元河原湯」には風呂が二つあって、
4階の展望浴場は
「肘折3号源泉」(73.5℃)と
宿独自の「元河原源泉」(34.9℃)の湯をブレンドしたもの。
加水・加温は一切していないという。
少しぬるめだが、
鉄分を多く含んださび色の湯は柔らかく、心地よい。
一階には貸し切り風呂があって、こちらは「元河原源泉」100%。

ともかくお湯に入るのと本を読むくらいしかやることがない。
ぼくは分厚い
「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」を携えてきた。
「秘湯」の割にはなぜか全館無線LAN完備なので、
インターネットは可能で、こうしてブログを書いたりしている。
料理は山形牛のすき焼きに岩魚の田楽焼き、馬刺しなどが出たが、
可もなし不可もなしといったところで、
一番おいしかったのは社長が自ら打ったという蕎麦だった。
(ほんの一口サイズで、これはもっと食べたかった。)
酒は地元大蔵村の「花羽陽」の純吟、原料米は出羽燦々100%。
すっきりした飲み口でなかなかいい。




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