Main menu

Pages


昨日一日でなんと3万ビューを超えるアクセスがあり、
嬉しいというよりいささか戸惑っているところです。
このブログを舞台に投稿者相互の論争が起こっていますが、
ジャッジする気はもちろん、口を挟む気もありません。
しかし、
論争を続けていただくのは全く差し支えありませんので、
ご自由にお使いいただいて結構です。
(ただし、人格否定や単なる罵詈雑言は今後消去するかも…)

ここでは(もう何度も書いていることですが)、
ぼく自身のスタンスをあらためて確認しておきます。

まず、仕事である「報道」において、
自分自身の主張をナマで表に出す気はありません。
もちろん、
報道内容は作り手であるぼくの価値観に大きく左右されます。
しかし、それが一方的なものにならないよう、
自分自身でチェックしますし、
第三者の目を通すことによって
組織的にも客観性を担保しようとしています。
ただ、現代の視聴者にとっては、
無記名の「作り手の顔が見えない」報道では
もはや充分な納得はできないだろうというのがぼくの認識です。
ブログやtwitterを書いているのは、
ぼく自身の考え方や思い、
人となりを少しでも解っていただくことで、
視聴者が主体的に報道を「消化」していくための
手助けになればとの思いからです。

以下に福島原発事故問題に対する
ぼくの個人としてのスタンスを書きます。

まず原発についてですが、
チェルノブイリで原発事故が現実のものになる遙か以前、
1970年代の学生時代から一貫して反対してきました。
プルトニウムなどという厄介極まりないものを生み出し、
その処理を世代を超えて先送りするなど、
無責任の極みだと考えたからです。
プルトニウムが半減する2万年の間には何が起きるか判らない、
何かが起きてしまえば取り返しがつきません。
原発は極めてリスクが大きな技術です。

現実に福島の事故が起きると、
ぼくはこれまで自分の番組(仕事)で、
除染の難しさを繰り返し伝えてきました。
目の当たりにする事態は、想定を超えて深刻なものでした。
しかし、どうすべきかを問われれば、
除染は困難を乗り越えて推進すべきだと考えています。
その理由は簡単、
いまも被災地で暮らすことを選択し、
切実に除染を求め続けている人たちがいるからです。

もちろん、
放射能汚染の影響が無視できない地域に暮らすことには、
一定のリスクがつきまといます。
しかし、避難は避難で、
心や身体の健康、経済面などのリスクを無視できません。
それは、放射能のリスクに比べて小さいと、
簡単に言ってのけられる問題ではないと考えています。
放射能のリスク、避難に伴うリスク、
そのどちらが大きいかを判断して導き出される結論は、
一人一人の置かれた状態、あるいは価値観によって異なります。
そして、その結論を出すのは、
当事者である住民自身でしかあり得ません。
ぼくにできることは、
報道に携わる人間として、
各々の判断に資する可能な限り客観的な情報を提供すること。
そして、それが何より大切だと考えるのですが、
住民それぞれの判断が「避難」であれ「除染」であれ、
全力で支えようとすることです。

避難を選択した住民に対しては、
避難を続けられるだけの社会的・経済的支援を保証すべきです。
一方、暮らし続けることを選択した住民に対しては、
安心して生活できるよう徹底的な除染を行うべきです。

「低線量被ばくのリスク管理に関するWG(作業部会)」は、
去年の暮れ、
「年間20mSvでの健康被害は証明できない」と報告しました。
長年研究を続けてきた専門家のいうことですから、
「御用学者」などと一方的に決めつけ否定する気はありません。
しかし、その一方で、
WGの会議に出席して
低線量被ばくの危険性を訴えた東大の児玉龍彦教授や、
「年間被ばく量は5mSv以下にすべき」と主張した
現在は独協大学准教授の木村真三氏らの立場もあります。
ぼくがどちらにより共感しているかは、
番組を見てくださった方には明らかだろうと思います。
ぼく自身は年間5mSvが一つの目安だろうと考えていますが、
その判断を住民に押しつける気はありません。
原発事故前の一般人の被ばく許容限度は年間1mSv。
その数字を超え、
政府が決めた避難基準の年間20mSv以下の地域については、
住民の「自己決定ゾーン」だと考えています。

いま「低線量被ばくのリスク管理に関するWG」の報告書に従い、
避難者に対する東電の補償を打ち切ろうという動きがあります。
許しがたいことだと考えています。
一方で、年間被ばく量が20mSvを遙かに下回る地域で、
徒に危険性をあげつらい、
住民に避難を強要するかのごとき言動も許せないと思っています。
環境中に大量の放射性物質がばらまかれた現在の状況は、
誰も経験したことがなく、
ほとんど想定すらしてこなかったものです。
起きてはならないことが起きてしまったいま、
ぼくたちにできることは被災住民の意思の最大限の尊重です。
繰り返しますが、
年間1〜20mSvの間は住民の自己決定に委ねられるべきです。
そのための冷静かつ客観的な議論をすべきだと考えています。
ぼくはその思いをベースに取材をし、番組を作っています。

reactions

コメント