いうまでもなく視聴率の話である。
世間広しといえども、
こんな低い目標を掲げているテレビマンは
きっと俺しかいないだろうな、と自嘲してみる。
それも達成はほぼ不可能だろうと、
半ばは諦めかけているのだ。
予想されたことだが、
3.11の一周年を越えたあたりから、
「東日本大震災」の急速な風化が進んでいる。
被災地以外の人たちにとってすでに「過去」であり、
震災ネタはあたらないというのが
NHKと民放とを問わず
TV界の共通認識になってきているようだ。
取材現場でよく顔を合わせた民放のディレクターは、
「震災関係の企画が通らなくなった」とぼやいていた。
原発関係にしても
最近の関心は再稼働問題に移ってきているよう思える。
大変重要なテーマであるには違いないが、
その陰で被災地、被災者が忘れられていないか。
番組を見ていただければ判るが、
放射能に汚染された地域の状況は何も変わっていない。
南相馬市でも、
本格的な除染はいまだに始まらないままだ。
「変わらない」というのは、
被災者にとってみれば
実は「悪化している」ということに他ならない。
留まって除染を待つ人たちにとっては不安が長引き、
避難している人たちにとっては
不自由な生活のストレスが蓄積する。
事態が膠着している原因の最たるものは、
除染によって発生する
放射性廃棄物の処分場が決まらないことだ。
国が3年後(もう「2年後」か…)に作るとしている
中間処分場は全く目処が立っていないようだし、
市町村単位の仮置き場もなかなか決まらない。
ましてや「福島県外に作る」としている最終処分場が
本当にできると思っている人間など、
政府関係者を含めて誰もいないのではないか。
番組の完成後、
南相馬市では大規模な仮置き場の建設を事実上断念し、
自前で仮置き場を確保した地区(行政区)から
逐次除染を行なう方針に転換した。
南相馬市に130余ある行政区のうち、
今までに仮置き場を確保したのは4行政区にすぎない。
廃棄物をどこに置くのか、
地区の内部でも調整が難航しているのが現実で、
このままでは
いつまでたっても除染できないところが現われそうだ。
「ETV特集」は視聴率は低いが、
大変いいお客さん(視聴者)に支えられてきて、
「視聴質」は極めて高い番組である。
多くの方々の熱い支持があって初めて打ち切りを免れ、
難易度の高いテーマにも挑むことができた。
いま現在も、
複数のクルーが原発問題を追いかけて取材中だ。
「変わらない」ことを伝え続けるのは
常に「新しさ」を求められるテレビには辛いのだが、
風化させてはならないという思いに駆り立てられ、
ぼくたちはこれからも「現場」に通い続けるだろう。
東北を忘れず、
被災者目線で「伝え続ける」ために、
一人でも多くの方に番組を見ていただきたいと思う。
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