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モン・サン・ミッシェルの夜は更けて…

フランスでの三日目はモン・サン・ミッシェルに向かう。
きのう買っておいたチケットでTGVに乗ってレンヌへ。
そこでバスに乗り換えて1時間あまりで到着した。


噂には聞いていたが、日本人ばかりだ。
控えめに見積もっても半分くらいはそうか。
パリのブランド店は中国人に席巻されているらしいが、
彼らの関心は専ら買物にあって、
まだこの世界遺産の島にまでは及んでいないようだ。
(それでも何組かの中国人たちに会った。)

モン・サン・ミッシェルに着くとまずオムレツを食べる。
これはお約束である。
妻は鍼灸院の客から
「おいしくない」と聞いてきたらしいが、
それでもやっぱり「名物」は食べたいものらしい。
ぼくは予想していたよりはおいしいと思ったが、
強気な値段設定が許せない。
コースなどは頼まず単品で食べたが、
それでも二人で(邦貨にして)1万円を超えた。
たかがオムレツで5千円とるなどは
天人ともに許さざる暴挙というべきであろう。
そのうち天罰か当たるのではないか。

昼食の後は修道院の見学。
これも「お約束」である。
ぼくが興味があるのは村の佇まいであって
修道院ははっきり云えばどうでもいいのだが、
せっかくモン・サン・ミッシェルまで来て
修道院は見ませんでしたというのも気が引ける。


幸い、この季節の第一日曜日は見学料が無料である。
日本人の団体客が来ているので、
妻はちゃっかり小判鮫を決め込んでガイドの解説を聞く。
ぼくは、故事来歴はそっちのけで写真を撮る。
そもそも信仰心というものが全く欠如しているぼくだが、
日本の神社仏閣と同じで、
こうした場所に身を置くと
なんとなく敬虔な気持ちになるものである。


モン・サン・ミッシェルは
教会であると同時に要塞であり、
島を囲んでまるで迷路のような城壁が張り巡らされている。


ぼくにとって面白いのはこの城壁の道で、
この島で何百年ものあいだ続いてきた
人々の暮らしに思いを馳せながら歩きまわる。
妻はどうせ「疲れた」などと
ぶぅぶぅ言うに決まっているので、
島のホテルに置いたまま、一人で歩く。


日が暮れると昼間の喧騒が嘘のように島は静かになる。


ぼくらが泊まったホテルは
この地方の伝統の様式らしい木造の建物で、
屋根裏部屋のようなツインである。
食事もホテルの食堂で
伝統的なノルマンディーの田舎料理を食べた。
部屋の遮音性が悪く眠れるかどうか心配したのだが、
夜はほとんど物音もない深い静けさに包まれた。
当初は
モン・サン・ミッシェルでの宿泊に反対していた妻が
泊まってよかったね、と呟いた。


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