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日韓“合意”の裏表

ぼくは自分の価値観が「マイナー」だと自覚している。
視聴率1%にも満たない番組を作り続けてきたわけだし、
何より大洋ホエールズ以来、50年来のベイスターズファンだ。
自分が多数派の一員などとは夢にも思わない。
ただ、そんなぼくでも、
多数派に属していると思えることが一つだけ(?)あって、
それは「支持政党なし」ということだ。

支持する政党はおろか政治勢力もないぼくにとって、
政治的選択は「どこが多少はマシか」という一点に絞られる。
そんなぼくに言わせれば、
現在の安倍政権は「考えられる限り最悪の選択」である。
安保などの外交政策、アベノミクスの経済政策、
社会保障の切り下げと企業優遇、強権的なマスコミ対応…
どれひとつとっても全く支持できない。
願わくば、なんとか早くお引き取り願いたいと考えている。
しかし、その安倍政権が、
よくやったかな?…と思えることがひとつだけあった。
去年の暮れの、従軍慰安婦問題をめぐる“日韓の和解”である。
もちろん、
当事者である旧慰安婦女性の理解を得るという課題は残るが、
いつまでも両国が不毛な対決を続けているよりはいい。
ともかく、日本政府が「軍の関与」を公式に認めて、
国家としての責任を自覚し、
謝罪するというならそれは一歩前進だと思った。

ところが、雲行きがいきなり怪しくなる。
片山さつきさんを始めとする保守系議員が、
「(韓国と約束した)10億円の拠出は
 (慰安婦を象徴する)少女像移転が前提」だと言い始めたのだ。
常識として考えれば判ることだが、
民間団体が設置した少女像の移転を政府に求めることなど、
民主主義国家である以上は考えられない。
つまり、そもそも筋が通らない要求なのである。
だから、公式の合意文書には、
「韓国政府は少女像の移転に努力する」としか書かれていない。
当然の話で、
韓国政府には「努力」以外にできることなど何もなく、
従って「少女像の移転」は
政府間合意の「前提」などにはなり得ない。
(片山さんらは)何を馬鹿な話をしているのか、
ようやく合意を取り付けた安倍政権の足を引っ張るつもりか、
と大いに疑問に思ったものである。

ところが、合意から数日を経ずして、
新聞紙上などで、
「少女像移転が合意の前提」だとする
日本政府筋の見解を伝える記事が相次いだ。
ありえない話だ、とぼくは思った。
そんな条項は公式の合意文書に一言もなく、
もとより韓国政府が受け入れられるはずもない条件だ。
(民主主義国家として要求することすらあり得ないと思う。)
安倍政権はせっかくの合意を自らぶち壊しにする気かと訝った。
現に、韓国政府や、慰安婦を支援してきた民間団体は、
日本の報道論調に対する不快感・不信感を隠そうともしない。
このままでは、
日韓関係は却って修復不能なところまで悪化するのではないか?

だが、冷静に考えると、
報道されたような日本政府の対応はあり得ない話に思えてきた。
今回の日韓合意の背景には
アメリカの強い意向があったと伝えられる。
ぼくには外交に関する確かな情報源などないが、
筋道として、おそらくはその通りなのだろうと思う。
それ以外に、
日韓両国の政府が
それまでの姿勢を改めてまで和解を急いだ理由は考えられない。
してみれば、
せっかく成立した和解を台無しにすることは、
アメリカの面子を潰し、その意向を逆撫でにすることになる。
例えて言えば、
親分がせっかく段取りをつけた手打ちを
子分が無理筋のいちゃもんをつけてぶち壊すことに他ならない。
顔を潰されて黙っている親分はいないだろうし、
いまは亡き菅原文太さんの「人斬り与太」シリーズではないが、
逆らった子分は血だるまになって葬り去られるほかなかろう。
知性の欠如が問題にされがちな安倍さんだが、
この程度の道理さえ理解できないほどのマヌケではあるまい。
だとすれば、
国内向けには虚勢を張って強硬な発言をしながら、
その陰でアメリカに対しては、
「親分、あんじょうしまっさかいに、
 申し訳おまへんが、もうちっと黙って見とっておくんなさい。
 最後はきちっとわてがカタつけさせてもらいます」
…とかなんとか、二枚舌を使い分けていそうな気がする。

そのあたりの裏表の機微を報道機関はきちんと伝えるべきだ。
まかり間違っても、
政府の世論誘導のお先棒を担ぐようなことがあってはならない。
ぼくは政治部の記者に基本的な不信感を持っていて、
彼らの多くは
「どっちを向いて仕事しているかわからない」と見ている。
かつてちょっとした問題になったが、
当時の森首相の「神の国」発言に対して
マスコミ対策を指南したNHK記者みたいなのが
政治家の周辺に多数いそうな気がしてならないのだ。
政治の深層を知りつつ記事にはしないことで、
政治家と一種の共犯関係になり、
自分も政治を動かしている権力者の一員にでもなったように
思い違いをしている連中が多いのではないか、と。

去年は、政治・社会・経済的に酷い一年だったと思う。
今年はもうちょっとはマシな一年であって欲しいと心から願う。
そのためには、自分自身も原点に立ち戻るしかない。
本業の番組はもちろん、
インターネットを駆使して、
民主主義を支えるための発信を続けていきたいと考えている。

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