Main menu

Pages

ドゥテルテ氏がフィリピン大統領に就任して、早くも1年3ヶ月が経過しました。公約通り、フィリピン全土で展開中の対麻薬戦争。今でも毎日のように、この戦争で殺害された人々のことが報道されています。

フィリピンのテレビニュースでは、今回の麻薬戦争に限らず、事件や事故の被害者の死体を撮影することに躊躇がありません。もちろん顔や死体の状況がはっきり分からないように、ボカシをかけたり、体の一部だけをクローズアップ。それでも夕食時に、子供も一緒に見る映像としては、ショッキングに過ぎる。

ドゥテルテ大統領による対麻薬戦争と超法規的殺人は、すでに日本でも繰り返し伝えられているので、ここで詳しく解説する必要もないでしょう。この8月には、薬物とは無関係とされる高校生が、警官に射殺される事件が発生し、国内からの批判が強まっています。

このブログでも、何度か取り上げたこの話題。死刑制度が廃止されたこの国で、裁判抜きでの容疑者の殺害は、議論の余地のない犯罪行為。それでも大統領の支持率が下がる様子は見られない。

私も、国民の支持があるから許される、というものではないと思います。深刻な人権侵害だと、国連や外国の政府が懸念を示すのも当然でしょう。とは言え正直なところ、ヨーロッパやアメリカの政治家や団体が、人権や人道を盾にドゥテルテを非難するのは、感情的に反発を覚えます。

そもそも、フィリピンを含むアジアなどの国を侵略し、何百年にも渡って搾取し続けてきた国に、そんなことを口にする権利があるとは思えない。今さら人権を持ち出すのなら、麻薬がここまで骨がらみの社会問題になる以前に、なんらかの支援策を取れなかったんでしょうか。

無茶苦茶な理屈なのは分かっています。法が無視され、一方的に殺害される人がいる現状に異を唱えるのに、その人の国籍は関係ありません。分かってはいるんですが、どうしても腹が立って仕方がない。

私は今のやり方が最善の方法だとは思いません。毎日、警官に殺された人の肉親や友人が嘆く姿を、テレビで見せつけられるのはうんざりです。でも、雑貨屋のオバちゃんまでが、覚醒剤の密売をするほど歪んだ社会を、他にどんな手段で矯正できると言うのでしょうか。

実は、私たちの住むネグロス島のシライ市にも、対麻薬戦争の影響がジワジワと迫っています。道端で容疑者が射殺、というような直接的な事件はないけれど、こんな田舎街のバランガイ(町内会)でさえ「対麻薬戦争」をポスターで呼びかけ。


そして、麻薬取引ができなくなって生計の道を絶たれた密売人が、窃盗や強盗に流れている。自宅近くでも、目に見えてそうした犯罪が増えています。実際にホールドアップの現場を目撃したり、銃声を聴いたという話も。

フィリピンに住む限り、他人事ではない対麻薬戦争。一刻も早く収束してほしいと願っていつつも、ドゥテルテ大統領のやり方を、単純に批判する気にはなりません。


reactions

コメント