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昨年最もおいしかった通貨

FXでは初心者はレバレッジを低く抑えてスワップ収益を軸にした長期戦略から入り、中級者になったら低レバレッジで短期売買を試して、上級者になったら高レバレッジにするのが王道かと思います。
表にするとこんな感じです。

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※レバレッジ高の長期投資というのは即破産しますのでありえません。

さて、その初心者向けの低レバ・スワップ重視戦略では、売買する外貨を証拠金の2~3倍程度に相当する額に抑えますが、そうするとスワップの多いNZドルとかランド等を買いたくなるのが人情だと思います。しかし、単に見た目のスワップの多さがそのまま有利とは一概に言えません。

例えば、まったく同じレートとスワップの通貨ペアA/円とB/円があるとして、統計的にA/円の価格変動がB/円の半分だったら、A/円をFXで買う人はB/円より2倍のレバレッジを掛けていいことになります。
すると、A/円をFXで買ったときの受け取りスワップは2倍になりますから、A/円を買ったほうがいいと言えます。
(ここでは、流動性リスクやカントリーリスク、ファンダメンタル等は全て「価格変動」に織り込まれるとして考えます)

つまり、スワップの有利不利を考えるには価格変動リスクも考慮に入れるのがより正確な判断に近づくと言えるでしょう。

当たり前の話ですが、10年前のタイバーツのように、もし価格変動リスクが無いのと同然なら、レバレッジ最大で高金利通貨を買えばいいわけです。でも現実はそんな美味い話はありませんのでFXではレバレッジ管理が必要なのです。
(そんな美味い状態だったバーツがどうなったかはみなさんご存知の通りです)

しかし、実際には各通貨でレート、スワップ、価格変動リスクが全てバラバラですので、同一条件で比較するのは少々厄介。

そこで今日は4通貨を例に、そのバラバラの要素を米ドルを基準に調整し、昨年一番オイシかった通貨は一体何なのか?を考えてみます。

まず、各通貨を1万通貨買ったときの1年間にもらえるスワップの合計を求めます。
この合計を1万通貨相当の円で割れば、年利回りが出てきます。

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データは外為どっとこむの直近のデータを使用しました。

このように、日本とその国の政策金利差とほぼ一致するはずです。

次に、その通貨が昨年1年間にどれだけ動いたかを見てみます。
最高値から最安値の下落率を求め、その通貨の価格変動リスクと考えてみます。
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昨年はサブプライム問題のせいか、ドルはユーロに安定度で負けています。あとランドが意外に安定していますね。

次に、各通貨の下落率を全て米ドルと同じになるようにレバレッジを掛けていた場合のスワップを求めてみます。
すなわち、各通貨を米ドルの下落率の14%になる係数を求めて、その係数を利回りに掛けます。そうすると、各通貨で米ドル相当の価格変動リスクのレバレッジでその通貨を運用した時、どれがいちばんスワップ収益が有利だったのかが比較できます。

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結果はぶっちぎりでランド有利でした。

正直、ランドはめちゃくちゃ動くから少しくらいスワップが高くてもどうだろ?と思っていたのですが、これを見てちょっと興味が湧いてきました。


さて、以上で大体の傾向は分ったけど、上の価格変動リスクの計算は少々乱暴なので、これをもう少し丁寧にしてみます。
価格変動リスクにボリンジャー3σを使ってみましょう。

ボリンジャー3σとは、その範囲にレートが99.74%の確率で入るだろうと予想される範囲です。ちなみに
±1σの範囲には68.26%
±2σの範囲には95.44%
の確率で入ります。
(価格変動分布が正規分布であるとき)

この範囲が今のレートの何%に当たるのかを価格変動リスクとした場合はどうなるか。

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結果は、数値は変わりましたが、順位は変わりませんでした。やはりランドが有利だったようです。

またこの数値上では、最も価格変動リスクの高いNZドルでレバレッジ3倍、最も低いユーロでレバレッジ6倍以上の運用をしていたら破産(維持率20%でロスカットの場合)の可能性があったことになります。


【結論】
まとめると、安定性に注目すれば昨年に最も安定してたのはユーロ、次にドル、その次にランドということになりました。
また、昨年に限れば最もリスク当たりのスワップのリターンが良かったのはランドだったようです。

そしてドルはやはり不調だったと言えますが、昨年のドルにはサブプライム問題があったことを考えると、この問題をこなしつつ、この程度の変動幅で済んだことで「さすがドル」というプラス評価も有りだと思います。

どういう見方をするかは評価する人次第ですが、どちらにしても昨年はやはり体感通りドルにとっては受難の年だったということだけはデータからも伺えます。


P.S.
ボリンジャーバンドは標準偏差を使用しますので価格変動が正規分布であることを前提にしていますが、私はそうは思っていません(→「こんなことが現実に起きるなんて!」 )。従って、実践で外貨での長期投資をする場合、許容できるレバレッジはさらに低くする必要があると思います。


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