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”お金は他人の借用書”がバレるとき

真っ当な国ならどこでも、通貨は量的制限をかけて発行しています。そうしてお金の印刷に歯止めをかけないと、すぐにハイパーインフレになって紙幣は紙くずになってしまうからです。

そのため通貨は「資産性のあるものを担保に発行する」という決まりで発行されてきました。
つまり、通貨はその価値を裏づける何かの資産を担保に発行することで、その価値を保っています。

通貨の担保とは有史以来より金(きん)が王様ですが、近年では基軸通貨であるドルも担保として機能してきました。
ドルも昔は金を担保に発行されていた(金本位制)ので、他の国からみれば、ドル=金なので金を担保にしているのと同じだったからです。しかもその当時、米国は世界の金の半分を持っていました。

ところがその後、貿易赤字を垂れ流し続けた結果、にっちもさっちも行かなくなって、米国の金本位制はニクソンショックで電撃放棄されました。

でも通貨である以上、ドルを発行するには新たな何らかの担保が必要です。金のかわりに新しくドルの裏づけ担保になったのは何と”借金”でした。

借金が資産?担保?( ゚o゚)と普通の感覚では思うけど、簿記を習った人なら債権が資産であることは知っていると思います。借金は、その返してもらえる権利(債権)を持っている人にとっては確かに資産です。

つまりニクソンショックとは、それまでドル(=金)を担保に印刷された通貨全部がこれからは”米国人の借用書”になっていくことを意味します。

それでも相変わらずドルは世界の基軸通貨として君臨し続けました。それは既に他通貨も金本位制を放棄していたのに加え、米国は軍事力、経済力、石油支配力、外交力でズバ抜けた超大国だったからだと思います。米国なら間違っても踏み倒さないという「信用」があった。

ところで借金を担保に紙幣を発行すると、驚くべきことが可能になります。

金が担保の場合は金の量までしか紙幣は発行できません。しかし借金なら相手が返してくれると「信じれば」法律の範囲内であればいくらでも紙幣を刷ることができます。

ドルが生み出される最深部で行われていることは驚くことに、米政府が国債をFRBに差し入れて、FRBが政府の口座に”数字”を書き込んでいるだけだといいます。サブプラで揉めてる7500億ドルの公的資金も、こうやってブログに750,000,000,000ドルと書くのと同じ感覚で作れてしまうのですね。後のことさえ考えなければ。

米国は約40年間「信用」を武器にこの利点を行使し続けてきました。
そんな米国の姿勢に疑義をもってか、誇り高き性のせいか、フランスなどの欧州各国は結構な量の金も自前で保有していますが、日本は金の保有量が極少で、資産といえばドルばっかりです。
これでは”円”も”米国人の借用書”同然です。これが日本が米国の州のひとつといわれる理由でしょうか。

一説には、日本は米国に金を持つことを禁止されているという話もあります。金も核もなければ、そりゃそれを両方もっている他国の目線で見れば確かに属国です。

変動相場制になってからの通貨発行はドル担保からは変化したものの、現代の通貨は各国ともこのように「借したカネは返してくれるはず」という信用の上に成り立っています。

そんな信用社会のトップランナーだったドルですが、イラクで外交が傷つき、サブプラで経済が傷つき、今だピカイチで健在なのは軍事力くらいじゃないでしょうか。

サブプライムの直接的な問題はさておき、最も痛いのは世界中人たちがドルを「これってもしかして返してもらえない借金かも?」と信用が落ちたことに尽きます。そんなストーリーは今まで有り得ない事として考えなくて良かったことに「少しだけ」リアリティが出てしまった。お金とは幻想だと。

ただし上記の通り、今は金本位制でないので借金を担保にドルを大量印刷すれば穴は埋まるし、米国は何だかんだいっても金の保有量も多いので、世界恐慌の時みたいに一気に崩壊→戦争という急展開にはならないとは思います。

でも金融資本主義・信用社会で、そうやって紙幣を乱発して信用を揺らがすことは、針が風船に近づくようなもので、怖い。
万一風船が破裂したら、人々は仕事と財産をいっぺんに、そして一瞬に失うことになる。逃げ場は無い。

第2次世界大戦も、発端は世界恐慌で仕事、家、お金を全てを失った人々がやけくそになって「何がどう変わっても、”今より悪く”はならないから、とにかく変わってくれ」と変化だけを望んだことが、ナチスを誕生させたひとつの大きな原因でした。

しかしその変化の結果はというと”今より悪く”なって、財産に加えて命まで失うことになってしまった。

格差の壁を感じ始めた人々が小泉総理に破壊を望んで、よけい格差が広がったようなものでしょうか。えてして世の中ってそんなもんですよね。

だから「ダメリカざまぁ(笑)」とか「戦争になればいいのに」とかのん気にヤフー掲示板とか2ちゃんに書き込んでる人いるけど、そんなこと言ってる人ほど、戦争になったらお前が真っ先に最前線に送られる立場なんじゃないか?大丈夫か?と心配してしまいます。

サブプライムの原資産はせいぜい数十兆円(しかも焦げ付いたのはその一部)だったのに、それがこんなことになってしまったなんて、いかに金融資本主義が予想以上に信用によって膨張していたのか、システミック・リスクの怖さを思い知らされます。



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●世界の公的金保有2005年トップ20(※1)
順位  国名・機関名    重量(t)    外貨準備資産に占める
                     金準備比率(%)
��     米国    8,136.2     61.1
��    ドイツ    3,433.2     48.7
��    IMF    3,217.3     (※2)
��    フランス   2,977.8     51.4
��    イタリア   2,451.8     54.4
��    スイス    1,332.1     24.6
��    オランダ     767.5     51.3
��    ECB      766.9     22.0
9     日本      765.2      1.2
��0    中国      600.0      1.3
��1   スペイン     523.3     37.0
��2   ポルトガル    462.3     57.3
��3    台湾      423.3      2.3
��4   ロシア(※3)    386.5      4.1
��5   インド      357.7      3.8
��6  ベネズエラ(※3)   357.4     21.2
��7    英国      312.2      8.7
��8  オーストリア    307.5     33.9
��9   レバノン     286.8     25.3
��0   ベルギー     257.8     26.3

※1 公的保有には、民間・個人による金保有量は含まれていない。
※2 IMFのバランスシートでは、金準備の割合を計算することは許可されていないために不掲載となっている。
※3 ロシア、ヴェネズエラのデータには、スワップ取引分は含まれていない。

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