Sさんは、経営手腕があるのだろう、
食品加工を中心に多くの会社の経営再建を成功させてきた、云わば「再生屋」である。
Yさんの会社については製造ノウハウに惚れ込んでの買収(会社は黒字経営)だったが、
いま現在進行形で、赤字に苦しむ他の会社の買収(正確に云えば、営業譲渡)にも取り組んでいるという。
そのケースについての取材も問題ないという話で、
譲渡する側の社長(詳しくは書けないのだが、様々な事情がある)の了承さえ得られれば、
中小零細企業のM&A(企業売買)と事業再生についての同時進行型ドキュメントが撮れそうだ。
そんなわけで東京に帰る予定だったのを急きょ変更して、
もう一泊北海道に居残って、明日は譲渡側企業の社長とお会いすることにした。
会っていただけるということは取材がOKになる可能性もあるということで、
そうなれば、今週中にもカメラをまわし始める事態もあり得るという、思ってもみなかった急展開である。
ぼくは、ドキュメンタリーにおいては、予定調和は基本的に排するべきだと考えている。
そんなぼくにとって、
先行きがどうなるか判らないケースを追っていくのが一番やり甲斐を感じる仕事であり、
しかし、それはもちろん、相応のリスクを引き受けなければならないことをも意味している。
(なにせ「どうなるか判らない」のだから、番組がどう決着するのかも見えないわけで、不安はある。)
今回は、もう二週間くらいかけて各地を取材したうえで番組の基本方針を固めたいと考えてきたが、
もし、このケースの取材がOKとなれば、他の取材予定はうっちゃって、ここに集中するしかないだろう。
またしても「北海道で番組を作る」ことに関しては自分自身いささか忸怩たる思いもなくはないが、
チャンスがあれば理屈抜きに食いついてみるのが、この商売をしている人間の“本脳”みたいなものである。
ともかく「走れるだけは走ってみようか」という心境、
もし明日、譲渡側企業の社長の協力を取り付けることができれば、いきなり疾風怒涛の毎日が始まる。
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