PMは中国から飛散するPM2.5に代表されるように、あまりにもその量が多いと呼吸器系に障害をもたらす可能性のある物質です。
ポート噴射ではほとんど出なかったPMですが、直噴になるとこれが出てしまいます。
↑ガソリン直噴エンジン車のマフラー内側。誰のクルマかはナイショですw
むしろ、国産ガソリン直噴のPM排出量の方が欧州産のそれよりも多くなる可能性があるわけで。
詳しく見ていきましょう。
まずもって、この実験で使われた車輌が、欧州産も国産も2011年製であると言うこと。
まずはここが肝になるのですが。
つまり、欧州産はユーロ5が適用されているんですよね。
で、このユーロ5におけるガソリン直噴のPMに関する規制は「粒子重量の排出係数(mg/km)」が適用されるのみで、「粒子個数の排出係数(個/km)」については適用がありません。
ところがユーロ6になると、「粒子個数の排出係数(個/km)」についても規制が生じ、さらに2017年にはこれが強化されます。
一方、国産については、以前も今もこれからも「粒子重量の排出係数(mg/km)」の規制があるのみですし、しかもこれはリーンバーン(希薄燃焼)についてのみの規制で、現在主流のストイキバーン直噴では適用されません。
「粒子個数の排出係数(個/km)」については、今後も規制の予定がないらしく。
これを調査結果とともに図示すると、、
はい、横軸が「粒子重量の排出係数(mg/km)」、縦軸が「粒子個数の排出係数(個/km)」になるわけですね。
ご覧の通り、横軸の「粒子重量の排出係数(mg/km)」は日欧ともに規制(注4)がありますが、縦軸の「粒子個数の排出係数(個/km)」については欧州で規制があるのみですね。
(注4)日本における直噴ガソリン車に関する「粒子重量の排出係数(mg/km)」の規制対象は、NOx吸蔵還元触媒搭載のリーンバーンのみ
このことから想像できるのが、欧州産ガソリン直噴は今後PM排出量が減る傾向にある(少なくとも2017年規制値を下回らないと2017年以降発売できない)のに対し、国産ガソリン直噴は特に規制がないためそれを減らす努力はメーカーに委ねられている、と言えるわけで。
まあ、日本の自動車メーカーはその辺はしっかりしていると思うので、今より減らす方向ではあるんでしょうが、この手のことって規制の有無が最終的に結果に表れる気がするんですよね。
となると、同様のテストを2017年製のものでやれば、下の画像のような結果もありえるかなと思ったわけです。
国産も欧州と同様に規制すべきだと思いますけどね。
少なくとも、モード走行においては粒子個数の上限が担保されるわけでしょうし。
ちなみに、これらの規制を一覧にまとめたものとその解説は、これ。
名称 | 開始時期 | 粒子個数 (個/km) | 粒子重量 (mg/km) | |
---|---|---|---|---|
日本 | ポスト新長期 *1 | 2009年10月 | - | 5 *2 |
欧州 *3 | Euro5b | 2011年9月 *4 | - | 4.5 *5 |
Euro6b | 2014年9月 *6 | 6.0×1012 *7 | 4.5 *5 | |
Euro6c | 2017年9月 *8 | 6.0×1011 *7 | 4.5 *5 |
*1 平成21年規制(ポスト新長期規制)。
*2 吸蔵型NOx還元触媒を装着した希薄燃焼方式(リーンバーン)の直噴ガソリン乗用車に対してのみ適用。平均値であり、型式指定車に適用。JC08コールドスタートでの測定値に0.25を乗じた値とJC08ホットスタートでの測定値に0.75を乗じた値との和に対して適用。
*3 小型車両(基準質量2610kg以下)を対象。NEDCモード(コールドスタート1,ホットスタート4サイクル)。
*4 新型車を対象(In-Use Performance Ratio要件付)。全車両を対象とした規制は2013年1月~。
*5 ガソリン直噴車のみ適用。
*6 新型車を対象。全車両を対象とした規制は2015年9月~。
*7 粒径23 nm~2.5μmの固体粒子の粒子数を計測(注5)。
*8 新型車を対象。全車両を対象とした規制は2018年9月~。
よくこの国立環境研究所の試験結果を拙速に引用している記事・コメントを見かけますが、こうやってよく見てみるべきなんですよね。
規制のない国産と、規制のある(しかもこれから強化される)欧州産。
私なら、規制がしっかりあって排出量の上限が担保されている欧州産のほうが、環境に対する信頼性が高いと思ってしまいますが。
ましてこれから強化されるとなれば、年々そのあたりは改善されていくでしょう。
2017年に急に技術革新が起こると言うより、年々、どんどん良くなっていくという感じでしょうからね。
反面、規制のない日本。
まさか、メーカーが自前で車種ごとのPM排出量を測定して公表なんてしないでしょうし。
冠もついにダウンサイジングの波に乗っかってこれから国産の直噴ターボもどんどん増えていくと思いますが、欧州のように排ガス規制にPMも入れるべきと思います。
国立環境研究所さん、提言して下さい(笑)
んでは!
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